「学歴フィルター」の抜け道を探せ 就職に強い大学、見極めるポイントは?
就職活動の際、偏差値が高い大学、名前の知られた大学のほうが有利なのでしょうか。「学歴フィルター」の存在に、おびえてしまう学生も多いです。『「就活」と日本社会 平等幻想を超えて』(NHK出版)などの著書がある千葉商科大学の常見陽平准教授は、「大学選びはもっと包括的に考えるべき」と話します。どういうことなのでしょうか。 【アンケート結果】あなたは学歴フィルターを感じたことがありますか?
「偏差値が高い」は本当に安心?
大学進学を考えるとき、親はどうしても「その先」にある卒業後の就職のことまでイメージします。そのため、偏差値の高い大学、ブランド力のある大学に入ったほうが安心、と考えがちですが、常見准教授は「それはあまりに雑な考えです」と言います。 「そもそも『旧帝大』とか『早慶上理』『GMARCH』『関関同立』『日東駒専』などのくくり方は、もう何十年も変わっていないじゃないですか。保護者の方が高校生のときにも聞いたと思います。その間に世の中は大きく変わり、大学も変革を求められてきました。入試の偏差値が低めでも、学びのレベルが非常に高い大学がたくさんあり、そういう大学は受験者数も伸びています。一方で、ブランド力に甘えて、学びの質を高めることに無頓着な大学もあります」 多くの企業は、そこに気づき始めていると、常見准教授は言います。 「企業の採用担当の間で『いろんな大学の学生を採れ』『伸びている大学の学生を採用しよう』という動きが広がっています。実際に、面白い教育をしている大学はたくさんあります。たとえば、私が所属する千葉商科大学だと、サービス創造学部が多彩な企業と連携して学生の学びを深め、イベントを開催したり、新商品の提案をしたりと、アクティブラーニングを活発に行っています。その結果、これまで採用実績のなかった大手企業に就職する学生が出てきました。要は、『レベル』をとるか『ラベル』をとるかということではないでしょうか」
大学受験の犠牲とリターン
親は、ブランド力のある大学に入れば安心と思いがちですが、そうとは言えないということでしょうか。 「その通りです。もし『何が何でも東大、京大、一橋』『そうでないなら早慶上理』みたいな思い込みが保護者の方にあるとすれば、まずは深呼吸しましょう。少し冷静になって社会を見て、わが子を見て、考えてみてください。有名大学に入れるメリット、デメリットはどこにあるのか、と」 入試偏差値の高い有名大学に入学することは、確かに意義がある、と常見准教授は言います。ただ、そのために犠牲にするものもあります。 高校3年間をすべて受験勉強に捧げなくてはその大学に合格できないような場合、その犠牲に見合うだけのリターンがその大学で本当に得られるのでしょうか。有名大学に入ったものの、大学生活が楽しくなく、授業にも興味が持てないのであれば、得たものは『ラベル』だけです。一方で、高校時代に興味のおもむくままにやりたいことをやり、本格的な受験勉強は高校3年の夏ごろに始めて、納得感のある大学に入学する、という選択もできるのです。わが子にとってどちらがいいのかを、冷静に考えてみてください」