デジタルファッションの最前線:「Tribute Brand」の先進事例と創設者が見据える未来
「ジェネラティブアート」という言葉をご存知だろうか? 端的に説明すると「コンピューターのプログラムを使って自動的に作られるアート」のことを指していて、NFT(代替不可能なデジタルデータ)の生成方法のひとつとしても用いられている。 このジェネラティブアートとファッションを組み合わせた商品を展開しているブランドが「Tribute Brand(トリビュートブランド)」だ。 Tribute Brandは、ジェネラティブアート×ファッションという先進性を追い求めるだけでなく、サステナビリティにも配慮した商品製作を行っている。特に海外において注目を集めており、2022年7月にシードラウンドにて450万ドルの資金を調達した。 そこで今回は、Tribute BrandのCEOであるGala Marija Vrbanicに、商品製作の背景や特徴、今後の展望を伺った。
先進性とサステナビリティを兼ね備える「ODDS」
Tribute Brandは、2023年5月に「ODDS」と呼ばれるプロジェクトを発表した。 ODDSは、NFTアートプロジェクト「Chromie Squiggle」と、廃棄物ゼロのニットウエアを生産している「Waste Yarn Project」とのコラボレーションにより商品を展開している。 Tribute Brandはどのような背景で、これらのプロジェクトと協業して商品開発に至ったのだろうか。
「私たちは、現状のファッション生産システムや、すでに世の中に多くの服が出回っているにも関わらず、さらに多くの服が生産されている事実にうんざりしていました。 そのため、余った糸でゼロ・ウェイスト・ニットウェアを生産するWaste Yarn Projectと一緒に、環境に配慮した商品を生産することにしました。ODDSは、Waste Yarn Projectによって手作りで生産されていて、オンデマンド生産のため在庫が残ることはありません。 また、もう一つのコラボレーション先であるジェネラティブアートプロジェクトのChromie Squiggleと協業することにより、Chromie Squiggleのソースコードを活用して、世界に一つしかないセーターを生成することを可能にしました」とはGalaは語る。 Chromie Squiggleとは、Art Blocksと呼ばれるNFTプラットフォームの作品のひとつで、生成時にランダムな情報を取得し、その情報を基に色やグラデーション、波線の形などを決めるジェネラティブアートだ。情報はブロックチェーンにて記録されるため、一度決まったアートの形や色は変わることはない。 このChromie Squiggleのデータをセーターの設計図に変換し、ユニークなセーターを製作するのが「ODDS」の仕組みだ。