切り石とレンガで仕上げたモダンな倉庫 機銃掃射の弾痕が物言わず戦時を語る 曽於市大隅町岩川・佐伯金物店
昭和が続いているとすると、2025年は「昭和100年」に当たる。人とのつながりが密で、ものを大切にしていたあの頃。平成、令和にかけて、ふるさと鹿児島で今なお愛される建造物や老舗を探した。 【写真】曽於市の場所を地図で確認する
◇ 曽於市大隅町岩川の中心街には昭和初期に建てられたれんが倉庫が3棟ある。そのうちの一つが1916(大正5)年創業の佐伯金物店。建物には終戦末期の空襲によるという機銃掃射の弾痕も残り、貴重な歴史の語り部となっている。 現在、店を切り盛りするのは3代目の佐伯邦雄さん(64)。日置市伊集院出身の祖父直熊さんが岩川に移り住んで開業。跡を継いだ父の直邦さんは5年前、96歳で亡くなった。れんが倉庫は35(昭和10)年、地元の工務店によって建造されたという。 倉庫は高さ約5メートル。下部には切り石を使い、上部をれんがで仕上げたモダンな造りだ。鉄製の扉の付いた明かり窓もある。れんが部分に数十カ所の弾痕があり、生々しさが感じられる。倉庫にはビニールパイプや番線、たらいなど年代物が置いてある。貴重な建物だとして、2012年には市教育委員会の依頼で鹿児島大学が調査した。 佐伯さんは神戸市でも仕事を手がけており、岩川と行ったり来たりしながらの日々だ。「岩川のまちは個人商店が閉店するなど寂しくなってきた。商売はできるだけ続けていきたい」と老舗を守る覚悟だ。
〈企画連載「昭和100年ふるさとのレトロ」④〉
南日本新聞 | 鹿児島