遠藤憲一「それぞれの断崖」演技は高評もストーリー不評
遠藤憲一の主演ドラマ「それぞれの断崖」(フジテレビ系)が21日に最終回を迎えたが、少年犯罪などを扱ったシリアスな問題作だけにその後もネット上ではさまざまな意見が見られる。同ドラマは中盤から、遠藤演じる志方恭一郎が最愛の息子を殺害した同級生の母親・はつみ(田中美里)とまさかの“禁断の恋”に落ち、その行方も注目されていた。
物語の展開について行けない人続出
ネット上に多く見られるのは、「最初の3話ぐらいまでは面白く見ていたが、途中(志方とはつみの不倫)から気持ち悪くなった」「役者の演技は良いが話の展開があり得ない。これだけ不愉快なドラマは久しぶり」といった声。被害者遺族である父親が加害者の母親と恋愛に落ちるという展開に、批判が集中している。途中から視聴をやめた人もいれば、話の結末が気になって最後まで見た人もいるようだ。 「非常に重いテーマを内包した作品で、あえてきれいな言葉を使うなら、登場人物それぞれの立場からの『ゆるし』と『ゆるし、ゆるされることからの再生』といったテーマを描きたかったのかな、とも感じられるのですが、いくらなんでも最愛の子を殺された父親がその犯人の母親と恋に落ち、みずからの家族を崩壊させてしまう展開には、ついて行けないと思う人が続出しても仕方ないでしょう」と、スポーツ紙の40代男性記者も首をかしげる。 志方の身勝手な行動のせいで家庭を壊されてしまった妻と娘たちも、最終的にはそんな志方に一定の理解を示してしまうのだから、もはや「登場人物全員、神さま仏さま状態」。物語の展開が「あり得ない」と評されても当然といえる。
ドラマを救った出演陣の演技力
「2000年にも一度、三浦友和の主演でドラマ化された作品ですが、そのときよりさらに短い全8話というスパンでは、これだけの重い話をテレビドラマとして描くのには無理があるのではないでしょうか。破綻なくなんとかドラマを成立させたのは、遠藤憲一さんはじめ田中美佐子さんら、実力ある俳優たちの迫真の演技があったからだと思います」と指摘するのは、テレビ情報メディアの30代男性編集者。 確かに演技という面では、一つ一つの場面は本当に見ごたえがあったし、その見ごたえゆえに最後まで見続けた視聴者もいるはずだ。 連続ドラマを楽しむにあたって、どうしても心配なのが最終回。ネットでの考察が盛り上がった「あなたの番です」は、物語の展開よりも最終回での真犯人役の演技力にがっかりした声が多数出たが、「それぞれの断崖」の場合は役者の芝居は高評価でも物語の展開自体について行けない人たちの声が噴出した。ストーリーや演出、演技などの諸要素が噛み合えば名作誕生ということになるのだろうが……。次期クールは、果たしてどんなドラマが私たちを楽しませてくれるだろうか。 (文・志和浩司)