森保ジャパンの2024年は「90点」 アジア杯8強敗退も「心配にはなりませんでした」【前園真聖コラム】
「アジア杯でいい成績を出すことはW杯での好成績には結びつきません」
1月のアジアカップはグループリーグ第2戦でイラクに後れを取り、ベスト8ではイランに敗れてしまった日本代表だったが、9月に始まった2026年北中米ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選では快進撃を見せている。果たして、今年の森保ジャパンを元日本代表の前園真聖氏はどう観ていたのか。2024年の「採点」もお願いした。(取材・構成=森雅史) 【一覧リスト】森保ジャパンが「世界13位」 “ドイツ超え”最新ランキング「言葉を失った」 ◇ ◇ ◇ 11月19日のアウェーでの中国戦で日本代表の2024年の活動が終わりました。今年は1月1日のタイ戦に始まって、アジア杯、北中米W杯のアジア2次予選、3次予選と大切な試合が続きました。 アジア杯はいろいろ大変だったと思います。ヨーロッパのリーグが進行している中で選手を招集しなければならず、選手たちのコンディションも整っていないようでした。また、大会の途中で伊東純也がチームを離れるという事態にもなりました。 そういう状況の中でイラクとイランに負け、ベスト8で敗退することになったのですが、正直に言えば僕はあまり心配にはなりませんでした。なぜなら今の日本代表が目指しているのはW杯での躍進だからです。アジア杯も大切な大会ではあるのですが、アジア杯でいい成績を出すことはW杯での好成績には結びつきません。実際、日本が前回、アジア杯で優勝したのは2011年ですが、その後の2014年ブラジルW杯ではグループリーグ敗退に終わってしまっています。 もっとも、その後のチームの立て直しはとても良かったと思います。まずは3月の2次予選をしっかり乗り切って、6月のシステム変更に結びつけた部分です。 2022年カタールW杯の時に問題だったのは戦術バリエーションの乏しさでした。2020年からの新型コロナウイルスの影響で日本代表の試合数が少なくなり、親善試合も組めなかったり、組んでも相手チームの来日が間に合わなかったりなどということがありましたから、戦術を練り込む時間がなかったと言えるでしょう。 ですが、森保一監督を続投させたことで、第2次森保ジャパンはこれまでのベースの上に戦術を積み上げられています。特にこの3バックに関しては、W杯で使いはしたものの、非常に守備的な布陣でした。それが今は自分たちがしっかりボールをキープして主導権を握り、両翼の選手の特長を出せる戦術として出来上がっています。 その戦術を駆使して9月から始まった最終予選では躍進を続けることができました。過去のW杯最終予選を振り返ってみても、1998年のフランス大会の時は3戦目の韓国戦で敗れましたし、2006年ドイツ大会の時は2戦目にアウェーでイランに負けています。2014年ブラジル大会は6試合目のアウェーでのヨルダン戦、2018年ロシア大会は初戦のホームUAE戦、2022年カタール大会は初戦のホームでのオマーン戦と3戦目のアウェーでのサウジアラビア戦で負けました。過去、もっとも苦労しなかった2010年の南アフリカ大会でも2戦目のホームでのウズベキスタン戦、4戦目のホームでのオーストラリア戦に引き分けて、最終的には2位通過でした。 それらに比べると、今回は6試合を終えて5勝1分け、次のホームでのバーレーン戦で勝利を収めれば出場が決まる状況にまでなっているということで、素晴らしいと思います。さらにこの間、いろいろな選手を試してきました。少しずつ選手を入れ替えてさらに層を厚くしたという部分も見逃せません。 こうして振り返ってみてもいいことばかりが目に付きます。ですので、僕の今年の森保ジャパンの評価は「90点」です。あと10点はW杯の時のためにとっておきます。 [プロフィール] 前園真聖(まえぞの・まさきよ)/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。
前園真聖 / Maezono Masakiyo