【西田亮介が語る】なぜ、裏金問題は繰り返されるのか?政治家が資金の使途を絶対に明らかにしたくない理由
■ 法令遵守のインセンティブと罰則(サンクション)の不均衡 これについて、ぼくが安田さんと考えてみたいのは、政治における「法令遵守のインセンティブ」についてです。 ぼくが直感的に感じるのは、「法令遵守のインセンティブが少なすぎる」ということです。変な話ですが、いうまでもなく法令遵守は当然です。ところが、遵守してもわかりやすいいいことはなく、遵守に失敗したときのみ罰則(サンクション)があるといってもよいでしょう。 たとえば、公職選挙法と政治資金規正法において有罪の判決を受けると、公民権停止の処分がついてきます。 公民権が5年また10年の停止になる。つまり、これだけの期間選挙に立候補できないということは、事実上、政治家生命が終わるということです。 広島で起きた河井夫妻選挙違反事件*1 は記憶に新しいですが、河井案里氏と夫で元法務大臣の河井克行氏はそれぞれ有罪で公民権停止の処分を受けています。所定の期間、選挙に立候補ができません。 *1:2019年、第25回参議院議員通常選挙中 そういう状況下では、「立証を困難にするために物証を残さない」という方向に政治家が動いてしまうようにも考えられます。
■ 「公民権停止」という重すぎる罰則 裏金問題は過去にもあったし、現在進行形で生じています。自民党が30年前と同じようにルールを自ら変えたところで、次も起こるのではないか。 なぜ繰り返し起こるかというと、「収入を正確に記載しなければならない」と政治資金規正法で定められているにもかかわらず現状では正確でない内容を記載できてしまい、なおかつ立証が困難だから、というのが一般的な説明です。 しかしこれは裏を返すと、立証されてしまうと政治家生命が断たれるので、政治家は立証が困難ないまの状態を変えたくない、ということでもあります。 つまり、公民権停止という重すぎる罰則があることによって、政治家は情報の透明化や公開を積極的に嫌うし、隠すわけです。裏帳簿にして自由になるお金を作りたがる。自由になったお金を何に使っているかはわかりません。 私腹を肥やしているのかもしれないし、実際には事務所の懐事情が苦しく維持費に使っているのかもしれないですけど、とにかく脱法的で使途の見えないフリーハンドのお金を作りたがります。それでは問題は解決しないように思えます。 情報公開と透明性を確保するのと、もう少し中間的なインセンティブ、つまり政治家が法令を遵守するためのインセンティブのあり方があり得るのではないでしょうか。