草彅剛「イメージするのは長嶋茂雄さん」「それが僕の生きる道ですかね」
草彅剛が、名作「ヴェニスの商人」でシェークスピア劇に初挑戦する。約30年にわたり舞台、映像の双方で活躍を続けた実力派は、希代の悪役といわれる高利貸し、シャイロックをどう演じるのか。(小間井藍子) 【写真】あだ討ちの旅に出る「誇り高い浪人」草彅剛
ユダヤ人のシャイロック(草彅)は高潔な商人アントーニオ(忍成修吾)に対し、借金を返せないならば自分の体の肉を差し出すよう求める、という物語。
草彅がまず気になったのは、シャイロックの嫌われぶりだったという。「利子を付けて金を貸しているだけで嫌われている。現代との感覚の違いが面白いと思った」と笑顔を見せる。
元々は喜劇として書かれたという説にも着目した。「悪いやつが懲らしめられる様子を見て観客は笑って楽しむ構図なんでしょうけど、一人の人間が一方的にたたかれる状況って、どうなんでしょう? 今とは倫理観が違うとはいえ、シェークスピアはそこへの違和感も持たせたかったのでは」
こうした解釈を演出の森新太郎に伝えると、「いいね~」と笑顔が返ってきたという。森とは今回が初タッグ。「話していると脳が刺激される。楽しいですね」
本格的なシェークスピア劇に出るのは初めてだが、「実は、縁がある」という。1995年、つかこうへい作「蒲田行進曲」に影響を受けて横内謙介が脚本を書いた「フォーティンブラス」に主演した。「ハムレット」の中で2場面しか出番がないフォーティンブラス役の大部屋俳優が主人公の物語だ。「この作品がきっかけでつかさんにも出会えて、『蒲田行進曲』のヤスをやることになった。僕が今シャイロックをやるのにも、何か意味があると思う」
常に穏やかで、朗らか。“いいひと”イメージが強い草彅だが、近年はブレヒト劇「アルトゥロ・ウイの興隆」のギャングのボス、テレビドラマ「罠の戦争」の復讐(ふくしゅう)に燃える議員秘書と、ダークな役も多くこなす。「悪い役が大好き。シャイロックも徹底的に悪く演じることでギクシャクした背景との不一致みたいなのが出せれば」とほほえむ。