「知らない」では済まされない士業がやっている地道な準備 (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
『資格起業バイブル(横須賀輝尚 著)』
大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書「資格起業バイブル」から、再構成してお届けします。
■実務に関しては、自信を持てるようになっても、完璧はない
『Q. 業務知識を開業前に完璧に身につけるには、どの程度の実務経験が必要でしょうか? 将来、税理士での独立開業を考えています。独立した際に、仕事で困らないようある程度実務の知識を完璧にしてから開業しようと考えています。しばらくは今の会計事務所に勤務する予定ですが、3年から5年くらい修行を積めば一人前の知識を身につけられるでしょうか?』 私も同じような質問をベテランの先輩にしたことがあります。ちょうど開業して初めて行政書士として実務を受け始めたときでした。先輩同士の話には専門的でついていけないし、自分自身がお客様に相談されてもわからないことだらけでした。そのようなとき、どのくらい仕事を続ければ自信が持てるようになるのですか、と20年以上行政書士をしている先輩に尋ねたのです。 そこで先輩から返ってきた言葉が「今でも自信があるかどうかといわれれば、絶対の自信はないですね。法律や手続きは変わり続けるし、またイレギュラーの案件はいくらでも出る。だから、100パーセントできる自信はない」というものでした。 私は驚き、肩を落としました。「ベテランの先輩がこれでは、私なんかはまったく太刀打ちできないのでは……」と。実務経験の目安を聞くどころかかえって落ち込んでしまう始末です。しかし、それを察した先輩行政書士は次のようにいいました。 「横須賀さん、勘違いしてもらっては困る。絶対の自信がないというのは、あらゆる案件が100パーセントできる保証はないという意味で、数年もやればある程度のことはわかってくる。ただ、何年勉強するとか、それよりも重要なことがあるんです」 「それは一体何なのでしょうか」 「それは、自分の力量がどうあれ、目の前のお客様に全力を尽くすということです」 今でもこの言葉は強く印象に残っています。