「父親業をもっと美化せよ!」ノーベル経済学賞受賞者が提案する意外な少子化改善策とは?
ノーベル経済学賞受賞者のクラウディア・ゴールディンは、急速に近代化に突入した国々における出生率の低下は、経済成長が人々の、特に男性の社会的適応を上回ることで生じた、文化的および世代や男女間の衝突に起因していると主張している。 【画像】「父親業の美化」ってどういうこと? 彼女は、この問題に対処する方法として「父親になり、育児や家事をこなす姿を美化することは、出生率低下を逆転させるのに役立つ可能性がある」と述べている。
深刻な少子化の国に共通する「急速な近代化や経済成長」の過去
ゴールディンは2024年12月出版された研究論文のなかで、ギリシャ、イタリア、日本、韓国、ポルトガル、スペインなどの国々では、出生率が1980年代と1990年代に急落し、現在は女性ひとり当たりの出生率が1.3人を下回る「非常に低い」状態であると指摘している。 そして、これらの国は共通して、ひとり当たりGNP(国民総生産)の「急速な成長」を経験しているという。 急速に近代化や経済成長を遂げた先進国の男性は、より着実なペースで成長した国の男性に比べて、家事や育児に関わる時間が少ないことを示すOECD(経済協力開発機構)のデータを、彼女は引用し、そのうえで、こう述べている。 急速な経済発展により女性が雇用の機会を得て、自主性を獲得したとしても、家庭では相変わらず家事や育児のほとんどを女性が担っている場合、「女性(妻)は男性(夫)よりも、より少ない数の子供を希望するようになる」。 これは女性は、子供を産めば産むほど育児のためにキャリアを犠牲にせねばらなず、結果、経済的自立からも遠のくからだと、英紙「フィナンシャル・タイムズ」は説明している。 この「経済成長が社会的適応を上回ることで生じた夫と妻(男女間)、および世代間の不一致」が解決されていないゆえに、前述のような国では少子化が続いていると彼女は指摘する。 実際、最新の公式統計によると、2023年の女性ひとり当たりの出生率はイタリアと日本で1.2人、スペインで1.12人、韓国で0.72人であり、「これらの数字は、前世紀の経済成長が比較的継続的で、出生率が2010年代まで女性ひとり当たり約2人にとどまっていた米国、デンマーク、フランス、ドイツ、スウェーデン、英国とは対照的である」。