62歳で“現役”を続ける理由とは? アーチェリー銀メダリスト・山本博「もう1回復活したら面白いんじゃないかなって」
プロゴルファーの丸山茂樹がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ACN presents 丸山茂樹 MOVING SATURDAY」(毎週土曜 7:00~7:25)。11月23日(土・祝)の放送は、アーチェリー男子銀メダリストの山本博(やまもと・ひろし)選手をゲストに迎え、お届けしました。
◆山本博 62歳で今なお“現役”を続ける理由
丸山:山本さんは、1984年のロサンゼルスオリンピックで銅メダル、2004年にはアテネオリンピックで銀メダルを獲得ということで、世界を見ても数少ない20年の間隔があってのメダル獲得と。すごいですね。 山本:本当はもっと早く獲りたかったんですよ。でも、どんどん頑張れば頑張るほどメダルから遠のいた時期があって。で、“これはもうダメかな”って諦めたらまた近づいてくる感じでしたね。 丸山:それはメンタルの部分と技術面、大きいのはどっちなんですか? 山本:結果としてメンタルでしょうね。技術や自分のいろいろなトレーニング方法だとか、そういうのはどんどん新しい技術やいろいろなデータが入ってくるから、自分のなかで成長しているように感じるわけです。内容も充実していても結果が離れていくんだから、やっぱり自分のなかで心が空回りしていたんだと思いますね。 丸山:でも、それにしても20年もの間があって、それをまた克服してというか、そこでめげないで頑張ってメダルを、しかも色が上のメダルを獲るという。これは歴史に残る快挙じゃないかと思います。そんな山本さんは、オリンピック出場は5回、そして僕よりも7つ年上の1962年生まれと。 山本:昭和のど真ん中で、62歳です(笑)。 丸山:やっぱり山本さんは若いですよね。さっきスタジオに入ってきたときに、「まだまだ(現役で)やっているんだ」なんて話をしていましたが、最近はモチベーションもなかなか難しいと思いますけど、現役でやり通すというのはどうなんでしょう? 山本:絶好調だったときは、厳しい練習に励んでも大会で勝つと、それがもうご褒美のようになって。“これだけいい思いができるんだったら、また厳しい練習を続けていこう!”という思いになるんですけど、今はもうやれどもやれども大会で勝利から遠のいてしまって……表彰式では拍手をする側でずっといるわけで。 丸山:なるほど。 山本:どんどん若い子たちに敗れて。大会に出るたびにかなり切ない思いはしますね。 丸山:いやぁ、気持ちが分かります。アーチェリーの場合、年齢を重ねてダメになる一番のポイントって何ですか? 山本:一番は目ですね。(的を)狙うための照準器を見る目がすごくぼやけて、はっきり見えなくなってきているんですよね。 丸山:なるほど。 山本:若いときには、暗くなってきたりすると照準器があまりよく見えなくて的中(率)が落ちるんですけど、今はもう明るいときでも暗いコンディションのなかで射っているときと同じようななかで練習している感じで。それを自分自身が感じると、若い子たちと比べると“不利ななかでやっているな”というのは感じますね。今年は腰の手術をして、これまでレーシックも含めて体の手術も8回やっているんですよ。かなり精度の高い手術をしてもらっているんですけど、家族がものすごく心配するんですよ。 丸山:はい。 山本:どの先生もおっしゃるのは、「普通の生活をするんだったら、まだ手術しなくてもいいですよ」と。だけど、僕が競技を続けたいとなると、少しでも若いときの体に戻りたいと言うのであれば、手術をしたほうが少しいいかなということで、やってきているところがあるので。「(競技をするうえで)年齢を重ねて何かいいことはありますか?」ってよく聞かれるんだけど、今のところ私のなかでは何もないな。 丸山:はい。 山本:自分のなかで登ってきた山を振り返ると、40代前後が山の頂点にいて、45、46歳ぐらいから“もう下りを歩いてきたな”という感じが自分のなかであって。「じゃあ、なぜ今も続けるんですか?」っていうと、今も下りを歩いてるいるなと思うんですが、ひょっとしたら小っちゃな山でもいいからもう1回登り始めたら面白いんじゃないかなって。 丸山:なるほど。 山本:自分がもう1回復活したら面白いんじゃないかなって。そういう興味ですね。そこだけです。 (TOKYO FM「ACN presents 丸山茂樹 MOVING SATURDAY」2024年11月23日(土・祝)放送より)