震災原発事故13年 被災農地の行方(中) 営農型太陽光 復興支援で参入容易 農家の新たな収入源
福島県の浜通りは比較的温暖で雪が少なく、太陽光発電の適地とされる。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興支援として事業者は税制面で優遇されるなど、参入しやすい。被災農地に営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の設置が相次ぐ理由の一つだ。 ◇ ◇ 県外に本社を構える、ある太陽光発電関連企業は、浜通りに農業法人を設立し双葉郡内に営農型太陽光発電施設の整備を進めている。設置面積は合わせて約1・3ヘクタールになった。今後も事業を拡大する計画だ。担当者は被災地の活性化や雇用創出などにつなげるのが狙いと強調し、「復興に貢献したい思いが強い。農業と太陽光発電を組み合わせ、遊休農地を少しでも活用したい」と話す。 この企業は賃借や売買で土地を確保して太陽光パネルの施工などを進め、投資家や企業に販売している。震災の復興特区に伴い、設備投資費用を事業初年度に全額経費として計上できる「即時償却」などの税制優遇が適用されてきたため、投資家らに売り込みやすいと説明する。
営農型太陽光発電設備の設置には税制優遇の他、農林水産省や経済産業省、環境省がモデル構築の実証、設備導入費などを支援する補助金を設けている。 ◇ ◇ 原発事故の発生で避難区域が設定された12市町村の営農再開面積は2022(令和4)年度末時点で8015ヘクタール。原発事故発生後の営農休止面積約1万7千ヘクタールに対する再開率は46・3%で、半分に満たない。土地所有者の中には避難の長期化や高齢などを理由に営農再開を諦めた人も多い。営農型太陽光発電は農地の荒廃抑止、再エネ推進だけでなく、土地の賃借や売買によって営農を諦めた土地所有者の新たな収入にもつながっている。 双葉郡内に所有する土地を貸し出した70代男性は「農業の再開は考えておらず、手つかずのままになっていた。荒廃してしまうなら貸した方が農業や太陽光発電への支援につながり、収入も得られる」と打ち明ける。 県内の農業関係者によると、通常の営農で土地10アールを貸す場合の賃料は多くて年間1万円程度だが、営農型太陽光発電事業での賃料は年間約6~10万円に上る。双葉郡のある自治体の担当者は「太陽光を進めたい事業者と土地を何とかしたい所有者の間はウィンウィン(相互利益)の関係」と営農型太陽光発電事業が進む背景を推測する。
ただ、発電施設での営農が全てうまくいっているとは言い難い現状がある。土地所有者の期待とは裏腹に、作物が枯れたままになっていたり除草が行き届いていなかったりと、管理不十分な事例の改善は大きな課題だ。