中学校の冷水機、どこにでもあると思いきや・・・ 生徒が町長に直訴「熱中症予防に設置を」
学校で子どもたちの喉を潤す冷水機。夏場のオアシスのような存在だが、全ての学校にあるわけではない。広島県海田町の竹野内啓佑町長と町立2中学校の生徒の意見交換会で、海田中の男子生徒が訴えた。「熱中症予防に冷水機を」―。片や海田西中にはあるという。学校によって違いがあるのはなぜか。周辺地域を調べると、PTAの存在や自治体間の考え方の違いが見えてきた。 【熱中症警戒カレンダー】今年は9月になっても連日の熱中症警戒アラート
冷水機は、部活動があり、高校と違って自動販売機を見かけない中学校を中心に設置例が多い。海田西中には20年以上前から1台あるという。町の予算で購入した記録はなく、町教委は、1点1円換算で学校の備品購入に充てられるベルマークをPTAで集め、購入したと推測する。 同じ安芸郡内の府中、熊野、坂の3町に聞くと、全5中学校に2~8台が設置されていた。PTAから寄贈されたものもあれば、町費で買ったケースも。熊野町内の2校には、PTAの寄贈で1台ずつあったのに加え、4年前、熱中症対策に向けた国の補助金を使って町が増設していた。 同県廿日市市は今年6月に熱中症対策として、独自に約300万円を負担して3小中に計8台を導入した。中学生が市政をただす昨年度の「子ども議会」での提案がきっかけ。市教委学校教育課は「使用実績を踏まえて他校への設置も検討する」としている。 災害級ともいわれる近年の猛暑を背景に冷水機の導入が広がる中、広島市は趣が異なる。市立の全63中学校のうち設置しているのは2校だけ。今後も設置予定はなく、保護者に負担をかけないようにとPTAからの寄贈も受け付けていない。 市教委は「学校の水道水は飲めるし、各家庭に水筒の持参もお願いしている」と冷水機は必須でないとの立場をとる。 コストとの兼ね合いもあるのだろう。メーカーのサイトを見ると、機械そのものは10万~20万円程度が主流のようだが、手洗い場などから離れた場所に置けば配管の工事費がかさむ。 衛生面などの理由から冷水機を使わない生徒もいる。新型コロナウイルスの流行時には、感染予防の観点から使用を禁止する例も相次いだ。今でも噴き出す水を直接飲まず、水筒についで飲むよう指導している学校もある。 町長に設置を求めた海田中の男子生徒は1年前の夏休み、部活動の練習試合中にチームメートが熱中症で搬送され、問題意識を持ったという。冷水機設置を公約に掲げて昨年の生徒会役員に当選したそうだ。提案を受けた竹野内町長は「前向きに検討する」と応えたが、現時点で結論は示されていない。
中国新聞社