山崎ハコ、デビュー50周年 「17歳の自分を裏切るまい」 記念アルバム「元気かい」発売
「でも、50年で一番しんどかったのは、その件じゃない」とポツリと語る。
山崎は平成13年にギタリストの安田裕美と結婚した。井上陽水をはじめ大勢のアーティストの後ろでアコースティックギターを奏でてきた。
1人で弾き語りをしてきた山崎が、安田の伴奏で歌うようになった。
だが、安田は令和2年に72歳で死去。以来、山崎は「喪失感の中で生きてきた」と語る。
「安田さんが生きていたら、私の声が出なくなっても、彼がギターを弾けなくなっても、ずっと2人でライブハウスを回り続けるのが理想だった。安田さんがいなくなってすべてが変わった」
幕が降りた。もう一度上げる気力をなくしたという。だが、一昨年あたりから、この幕をくぐって向こう側を見てみたくなり、年に1度、ライブを再開した。
声も出る。周囲も「よかった」といってくれる。「そうなんだ。やれるんだ」。歌うのが楽しくなった。
■元気だよ、伝えたい
10月にテイチクエンタテインメントから50周年記念アルバム「元気かい」を出した。イラストレーター、黒田征太郎に描いてもらった青い鳥に山崎がほほ笑みかけるジャケットデザインは明るい。
「笑っている私の写真をあしらったジャケットは、これが初めてじゃないかな? 心配してくださっているファンの皆さんに『元気だよ、笑えるようになっているよ』と伝えたくて」
50年前、「山崎ハコ」というシンガー・ソングライターを生み出した「責任は自分にある」と語る。
「どんなに苦しくても、かっこよく続けたい。時代や音楽をめぐる環境が変わろうとも、私の芯は変わらない。デビューのきっかけをつかんだ頃の、あの17歳の私に顔向けができないようなことはできない」
50年前の自分を裏切るまいと、山崎は自らの信じるところを歌い続ける。(石井健)
デビュー50周年ライブ「飛・び・ま・す」は、来年3月30日=沖縄・桜坂劇場ホールA▽4月13日=大分・日田市民文化会館「パトリア日田」小ホールで。