「エビを赤く塗る人」がビジネスで成功できない納得のワケ
たとえば、ある工場で不具合が生じたという連絡が入った。それを上司に伝えようものなら、必ず「おまえ、見てきたんか?」と一喝されます。聞いたままの話を報告するのではなく、まず工場に行って自分の目で確認してこいということです。現物を確認するために現地に行くと、そこで「付随情報」という、思わぬ収穫を得ることも少なくありません。現物と、その付随情報を合わせることで、より有効な策を打てるケースを、私は多々経験してきました。 ● 現地では「おみやげ情報」も得られる 一例を挙げると、トヨタの自動車部品を製造しているベトナムの工場で不良品が多発したとき、現地で製造ラインを確認したところ、問題は製造ラインそのものにあるのではなく、しばしば起こる停電によって製造ラインが止まってしまうことだと気づきました。 停電のたびに製造ラインが中断してしまうせいで、作業が安定しない。それが不良品につながっていたわけです。これは、現地に行かなくては見えてこなかった付随情報です。ベトナムに飛ぶ前、部品のサプライヤーに聞き取りをしたときには、「停電」のことなど一言も出ませんでした。おそらくサプライヤーは、「工場で不良品が多発している」→「製造ラインでの作業ミス」と早々に結論づけ、それ以上の真因究明はしていなかったのでしょう。現地でしばしば停電が起こっていることも知らなかったということです。 工場で不良品が多く生産されてしまっているという情報に、ベトナムの電力供給問題という、その国特有の付随情報が合わさったことで、事態改善のために根本的に必要なことは作業ミスの予防策ではないと判断しました。 電力供給は一国のインフラの問題ですから、それ自体は、一企業であるトヨタとしてはどうしようもありません。そこで、ベトナムの電力供給が比較的安定する時期と時間帯を分析し、早めに生産個数を稼いでおくという策を打ち、何とか切り抜けました。 話はこれでおしまいではありません。新興国の工場については「停電が起きる前提」で生産準備を行なう必要がある。 「つまり、ベトナムのような国は他にもあるんじゃないか?」 ベトナムでの一件以来、私はこの教訓を念頭に、広い視野で仕事に取り組めるようになりました。現地現物で付随情報を得て解決に当たったことが、その後、ずっと仕事に活きています。