グレーマーケット

中国で並行輸入品を含む、「グレーマーケット」と呼ばれる市場が、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンなど、欧州のトップブランドにとって深刻な脅威になっている。景気低迷に加え、高級ブランドの値上げによって、中国の消費者はより高級品の価格に敏感になっているというのだ。 【全画像をみる】景気低迷の中国で活況の「グレーマーケット」とは何か…売り上げ減少の欧州ブランドに痛手 グレーマーケットとは、もともと正規代理店によって販売された商品が、メーカーの意図しない商取引により、合法的な流通チャンネルを通じて再販される市場を指す。具体的には、セレクトショップなどの正規店が余剰買い付けした商品を、安価で第三者（海外ファッション通販サイトなど）に転売する構図などだ。これについて、米国連邦最高裁や欧州連合（EU）最高裁は、これまでに「グレーマーケットでの商品購入は違法ではない」との判決を下している。 ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールを擁するLVMHは今月、第3四半期の売上高が3％減収したと発表した。背景として、中国と日本での需要が弱まり、コロナ禍以降で初めて四半期決算が予想を下回ったと分析している。また、イタリアの高級ファッションブランド、サルヴァトーレ・フェラガモも、中国の需要減速により第3四半期売上が減収したと発表した。 「中国では、（他国との）価格差が存在する限り、価格に敏感な消費者がグレーマーケットに利用できることが重要な問題だ」と、中国のグレーマーケットでの高級品流通を追跡しているコンサルタント会社リハブのマックス・ピエロCEO（最高経営責任者）氏はロイター通信に語った。 またロイター通信によると、中国で年間570億ドル（約8兆6000億円）規模と推定されるグレーマーケットでは近年、「得物」（Dewu）などのプラットフォームが急激に人気を集めているという。 そこでは海外から直接調達される高級品などが、中国国内の正規販売店の価格より20％から50％も安く販売されているというのだ。 リハブは、Dewuの48ブランドの売上高が第2四半期に前年比19％増の70億元（約1400億円）を超えたと推定。また、米ブルームバーグは事情に詳しい関係者の話として、「Dewuで販売されたルイ・ヴィトン商品の価値は、2024年1～6月（上期）に前年同期比11％増の26億元（約555億円）に上ったと伝えた。「これは同期間のルイ・ヴィトンの中国での推定総売上高23億ユーロ（約3780億円）の14％余りに相当する」という。 中国の消費指標である小売売上高は9月にはわずか3.2％の伸びにとどまり、2023年通年の16.2％増と比較すると景気の低迷は明らかだ。そしてこの動向は欧州ブランドにとっては大きな痛手だ。というのも世界のラグジュアリー産業にとって、中国は世界全体の売上の約25％を占めているからだ。 さらに、ある高級品志向の消費者はロイター通信に、「高級ブランド品の値上げは間違いなく消費者が中古市場に目を向ける理由の一つ」だと指摘。グレーマーケットに加え、中古市場も拡大しているという。 一方、第3四半期の売上高が落ち込んだLVMHは、自社のブランド価値を守るため、より手頃な価格の新製品を導入する考えはないと強調。中古品市場に参入する意図もないことを明確にした。 だが実際、中国の中古品市場は活況で、高級品コレクションに目を付け、利益を得ようとする業者が増えているという。中古ブランド品のマーケットプレース「ZZER」の創業者ジュー・タイニチ氏は「売り手の数は急増しており、その過半数が初めて高級アイテムを売る人たち。だが、買い手側は横ばいにとどまっている」と語った。