菊池雄星の松脂疑惑はWBCでも世界へ広がったメジャー“暗黙の裏テクニック”
マリナーズの菊池雄星(27)が帽子のツバの裏に松脂と思われる異物を付着させ、それを指につけて投球していたのではないか、という疑惑が全米に波紋を広げている。菊池は8日(日本時間9日)敵地で行われたヤンキース戦に先発、7回と3分の2を投げて3安打1失点の内容でメジャー移籍2勝目を挙げたが、その試合での帽子のツバ裏の異物の付着と、その部分をしきりに触る映像と写真が、複数の米メディアによって報じられたのだ。 4月26日のレンジャーズ戦の登板でも菊池の帽子のツバ裏に同様の異物が付着していて、同じように登板中に、そこを触る仕草があったことを指摘するメディアもあった。 だが、その疑惑が批判される一方で、異物の利用がメジャーでは暗黙のルールであるという見解も多く報じられた。フリーペーパーのメトロ紙も、ヤンキースのアーロン・ブーン監督が「かなり終盤の8回にそのことに気が付いた。映像を見直してみて何ができるか判断する」とコメントしながらも何のアクションも起こさず沈黙したことに注目。 「投手が巧妙にできる限りはボールに手を加えることができるという野球界でよく知られた秘密がある」と明らかにした。その上で、「これはとても一般的な出来事のように見える。今シーズン初めには、メッツのノア・シンダーガードがフィリーズ戦でボールを触る前に彼のグローブの端に指2本をこすりつけているのが見られた。彼(の行為)を指摘する者があった一方で、問題はすぐに取り消された」と紹介した。 5年前にヤンキースのマイケル・ピネダが、フェンウェイパークでのボストン・レッドソックス戦で、首に松脂を付けていたことが発覚、ただちに退場処分を受けて、その後、出場停止処分となった。この「首の松脂」を指摘したのは、当時ESPNのアナリストとして働いていたブーン監督だったという。 同紙によると、ヤンキース史上最多の236勝をマークしたホワイティー・フォードは、捕手のエルストン・ハワードの協力でボールに傷をつけさせていたし、通算314勝のゲイロード・ペリーの自叙伝には「私とスピットボール(不正ボール)」との題名が付けられ、各種のテクニックを暴露、サイヤング3度受賞のジム・パーマーは、ドン・サットンからボールに傷をつける方法を伝授されたことを明かすなど、「歴代最高の殿堂入り選手も行ってきた」という。 「球に手を加えて投球することは、メジャーリーグの汚い小さな秘密であり続け、何らかの理由で決して完全に取り締まられることはないのだ。ヤンキースタジアムでの水曜日の夜は、そのことを証明し、ブーン監督の沈黙は、ヤンキースの投手陣にも身に覚えのあることを示唆している」とも指摘した。