菊池雄星の松脂疑惑はWBCでも世界へ広がったメジャー“暗黙の裏テクニック”
メジャーの公式ルールでは「投手は自分自身や持ち物に異物を付けることは許されない」と規定されている。だが、「バレないようにやればOK」という公然の“暗黙の裏テクニック”としてまかり通ってきた。 異物には、松脂、シェービングクリーム、各種ローション、ワセリン、中にはオレンジジュースまでが不正使用されるそうで、グリップ度が高まるためにボールの変化が大きくなり、時にはスピードアップにつながる効果があるという。だが、不正がわかっていて異物が使用される理由は、それだけではない。メジャーの滑る公式球への対策がある。 WBCでは、侍ジャパンにとっての大きな課題として、その大きさ、重さだけでなく、日本の公式球とは皮質が違うため滑って指に馴染みにくいというローリングス社製のメジャーの公式球への適応がクローズアップされてきた。NPBでしっとりとした質感の公式球を使ってきた日本人選手だけでなくメジャーの選手の中にも、その滑るボールに苦慮している選手が少なくなく、その対策として何らかの異物で指を湿らせる行為が、公然の秘密として行われ、その手法が投手間に広まり受け継がれてきたという実情があるのだ。 帽子のツバだけではなく、首筋や二の腕に、ちょっと見は汗のように見えるローションのようなものを事前に塗っておき、あくまでも自然の動作として、そこを触って指を湿らせることは、もはや公然の“裏テクニック”となっている。WBCでも各国の間で、その“暗黙の裏テクニック”が広がっていたという。異物利用には意図的な不正投球だけでなく、そういうメジャーの公式球への対策も含まれているので、メジャーの機構側も厳しく取り締まることができないという実情もあるのだ。 菊池の今回の疑惑を「巧妙にやらなかったことが悪い」と指摘するメディアもあったが、メジャーで生き残るための“暗黙の裏テクニック”は、「わからないようにやる」のが必須条件のようである。 ただ前出のメトロ紙は「なぜ、メジャーリーグがこの問題についてもっと用心深くならないのか、理解に苦しむ。コミッショナーのロブ・マンフレッド氏は、野球を次世代のファンにもっとアピールする方法を模索し続けているのだから、投手が違法な手法で優位性を保つことは、その方針に逆行し不愉快さをもたらすだけだろう。だが、メジャーリーグは、この問題を他のことよりも我慢できるものとして、いくつかのごまかしを“昔ながらの秘密”として残している」とも主張した。 “暗黙の裏テクニック”にメスを入れるべきか、どうか。菊池への疑惑で表沙汰になった以上、今後、議論になりそうだ。