全日本体操V7を達成した内村の危機察知力
一方、「7連覇という数字は気にしていなかった」と言いながらも、ケガを押してまで今大会に出場したのはなぜか。すでに4月の体操W杯で優勝した際に世界選手権の代表に内定していることを考えれば、無理をしないという選択肢もあったはずだ。しかし内村は、「全日本選手権やNHK杯は日本で一番大きな大会。そこに出て皆さんに見てもらいたい。ここを外すという考えはない」と、出場にこだわった。その背景にあるのは「感謝」の思いだ。 「ロンドン五輪で金メダルを取ってから、銀座のパレードや他のいろいろなところで想像以上に応援された。自分だけじゃない、周りの応援があるんだと感じ、頑張ることの原点はそこにあるのだという気がした。そこは大切にしなければいけない。五輪後にそう思った」もちろん「一番感謝しているのは家族。そこは直接言うのが照れくさいので、この場を借りて…。母の日のプレゼントも毎年、全日本の優勝がプレゼントですね」と照れくさそうに加えるのも忘れなかった。 実は僧帽筋の負傷以外にも、もう一つアクシデントがあった。大会前、貧血の症状が出てしまい、調子がなかなか上がらなかったという。それでも本番ではきっちりとした仕上げを見せた。持ち前の美しい体操、ぴったりと地面に吸い付く美しい着地もさすがだった。降りかかるさまざまな状況を乗り越えてきたからこそ成し遂げた7連覇。「確実に1年1年レベルアップしてきている」と話す表情には自信がみなぎっていた。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)