ティラーソン解任でも容易には始まらない「米朝戦争」
開戦の兆候と事前備蓄
北朝鮮の瀬戸際外交は相手国に譲歩を求め、アメリカの制限戦争は相手国に譲歩を求める策です。チキンレースならば相手国が怒って戦争することがあります。その典型例は、日本がアメリカから挑発されて開戦した太平洋戦争です。 ですが北朝鮮とアメリカはお互いに譲歩を求め、「にらみ合い」をしています。にらみ合いはチキンレースとは別物で、戦争を前提にしていません。 トランプ大統領が本当に戦争を決意した場合、その兆候は物資の集積で確認できます。元陸将補の松村劭(つとむ)氏によると、陸軍1個師団ならば一日で2000トンの物資を消費します。空軍が対地攻撃で1個師団を支援するなら、一日で4000トンの物資を消費します。 これらを毎日消費するので戦争前に事前備蓄するのが基本です。そうでなければ戦争の途中で物資が欠乏するからです。ですが、事前備蓄は未だに確認されていません。これはトランプ大統領が戦争を決意していないからでしょう。 トランプ大統領が戦争を決意したなら、平昌五輪を隠れ蓑に日本に物資を集積させていたはずです。何故なら、事前備蓄は数か月を必要とするからです。アメリカが恫喝で北朝鮮を譲歩させる意思を持つ限り、双方のにらみ合いは続くと思われます。トランプ大統領が戦争を決意した証は事前備蓄。これを基準とすれば良いのです。
米朝会談と北朝鮮の狙い
平昌五輪の閉会後、金正恩委員長は「体制の保証」などを条件に非核化に取り組む意思を韓国経由で示し、米朝首脳会談を要請しました。首脳会談にはトランプ大統領も応じる考えを示しました。トランプ大統領から見れば、北朝鮮の軟化は制限戦争の成功だと認識しています。だから制限戦争を続けて北朝鮮の非核化を目指します。それに対して北朝鮮は、核放棄を臭わせてアメリカに譲歩させることを目的としています。北朝鮮は核放棄をネタに議論を行うはずです。 北朝鮮は韓国を「メッセンジャー」として使いました。本来であれば、こうした核放棄への言及や米朝会談の開催要求は、北朝鮮が直接行うべきものです。これはつまり、韓国側の公表に問題があれば、北朝鮮はいつでも会談を破棄できるという体裁にしているということです。 北朝鮮の狙いは、トランプ大統領を躍らせることです。最初からトランプ大統領をだますことが目的だから、北朝鮮から直接メッセンジャーをアメリカに送っていません。そしてトランプ大統領は、自分が踊らされていることに気がつくまで、北朝鮮との交渉を続けることになるでしょう。