そのダイエット法が自分に合うか・合わないかを「簡単」「確実」に見分ける方法
ダイエットに繰り返し失敗してしまうのは、自分の「体質」や「性格」を無視しているからかもしれません。フィットネス先進国であるニュージーランドの公認パーソナルトレーナーmikikoが、「自分に合った方法」を選ぶことの大切さを解説します。 ※本稿は、mikikoの著書『ニュージーランド式24時間やせる身体をつくる ベストセルフダイエット』から、一部を抜粋・編集してお届けします。 〈写真〉『ニュージーランド式24時間やせる身体をつくる ベストセルフダイエット』(Gakken)より ■体質を理解すると心と身体をコントロールしやすくなる 今後10年先でも続けたくなるような「24時間やせる身体づくり」をするためには、世の中の様々なダイエットメソッドの土台として、体質の理解が役立ちます。体質の仕組みを知ると、「自分で変えられること」「自分では変えられないこと」を分別できるようになるうえ、自分には合わないものを無理矢やり押し付けることがなくなるからです。 「理想の身体は?」と聞かれた時に、国や次元をまたいだ理想を思い浮かべてはいませんか?テイラー・スウィフトの体型に憧れる日本人女性、アベンジャーズの体型を目指す日本人男性、峰不二子スタイルのように二次元のキャラクターが目標の女性……。よりリアルに表現されるアニメの影響で、極端に身体の凹凸が強調されたキャラクターが理想像として描かれることも増えてきました。 「こんな身体になりたい!」という時に、外国の芸能人やアニメキャラクターの名前が出てくる人は、体質を無視して「努力ではどうにもならないこと」を変えようとしているかもしれません。たとえそれが日本のモデルやK–POPアーティストなどのアジア圏の芸能人だったとしても、自分とはライフスタイルもDNAも異なる別人と比べていることに変わりはありません。 つまり、そもそも変えられないものを変えようと、もがいているだけなのかもしれません。 私たちは一人一人異なるDNAを持って生まれてきます。遺伝の影響力は、代謝、病気、体型、身長など、ものによって30 ~80 %ほどが関連しているといわれています。あなたが憧れるあの芸能人は、生まれ持った遺伝子などを否定している姿ではなく、自分の個性や体質を最大限に活かして、最も自分らしく輝いている姿ではないでしょうか。遺伝子を無視した「自分じゃない誰か」を目指しながら自分を磨いているわけではないはずです。 「憧れのあの人のようになりたい」とすでにこの世にあるイメージで目標を設定してしまいがちですが、遺伝子もライフスタイルも全く異なる人と自分を比べて何が生まれるのでしょうか。他の人のような自分になったとして、いったい誰の人生を歩もうとしているのでしょう。 「ダイエット」という言葉が、今の自分を否定するための免罪符になっていませんか?遺伝を無視した目標は長い目で見て、自分を傷つけます。自分の元の遺伝子を最大限に活かすのが、本当に正しい自分磨き。ダイエットに整形のような効果を期待していても、何も解決しないのです。 ■あの人の最善策があなたには逆効果!?朝活で太りやすくなる可能性も 目標設定【ゴール】だけでなくダイエットの方法【プロセス】も、遺伝的要素に逆って選ぶと心身に負担になることが分かっています。それを知らずにダイエットをすると、頑張っているつもりが逆に体重増加につながってしまうことも……。 人間の身体には生まれ持ったクロノタイプ(日周指向性)というものがあります。いわゆる朝型人間か夜型人間かを示すもので、遺伝でほとんど決まっています。脳は目から入ってくる光を使って体内時計を調整しますが、光の量を検知するメカニズムが生まれつき朝型人間と夜型人間では異なるのです。 このクロノタイプに合わせて生活することは大切で、朝型人間が夕方に活動したり、夜型人間が朝に活動したりすると、身体的能力も認知能力も劣ることが分かっています。 「運動をするのにベストなタイミングはいつか?」は多くの研究がされている分野で、タイミングによってはダイエットで始めた運動が逆効果になる可能性が示唆されています。 2型糖尿病の男性を対象に午前と午後のエクササイズの影響の差を調べた研究によると、午後に運動した群のほうがインスリン抵抗性の低下や脂肪減少などの効果があることが報告されました。また別の研究では、同じく2型糖尿病の男性を対象に朝と夕方の高強度運動の影響の差を調べたところ、朝に行なった場合には何もしなかった時よりも血糖値の指標が悪化したのです。 筋力やミトコンドリアの活動は午後に最も活発になり、身体のパフォーマンスは午後から夕方にかけてピークを迎えます。世界新記録の多くが午後や夕方に更新されるのも、クロノタイプが影響していると考えられます。 しかし、これらの研究結果は2型糖尿病の男性を対象としたものに限り、他のタイプの人を対象にした研究では朝に運動したほうが脂肪燃焼に効果的だったとしているものもあります。そのため、「いつ運動するのが1番効果的か?」という議論は今後も続いていくでしょう。 クロノタイプは遺伝で全て決まるわけではなく、生活リズムの変化に合わせて変動しやすい「中間型」の人もいるのが、この議論に着地点が見つからない理由の1つかもしれません。 ただ1つ確かに言えるのは、朝活は万人向けではない可能性が高いということ。「デキるビジネスマンは朝にワークアウトをする」といった常識が広まり、朝活ブームが始まりました。現代社会は朝型で動いていて、早起きでない人を「怠け者」とみる風潮もあります。 しかし、自分のクロノタイプを知ったうえでその重要性を意識していれば、そうした世間の流行り・廃りに流されることはありません。無理をして早起きしたり遅起きな自分に罪悪感も抱いたりすることなく、自分の体質に合わせてベストなタイミングを選ぶことができるでしょう。 ■今現在の身体は 「生まれ持った遺伝子」×「環境」で出来上がったもの 私たちの今現在の身体のベースは「生まれ持った遺伝子」である程度決まりますが、とはいえ遺伝で全てが決まるわけではありません。その遺伝子に「環境」がスパイスをかけ、毎日浴びる刺激に対応していくことで「表現型」と呼ばれる今日の心と身体が出来上がっています。 そのため同じ遺伝子を持った双子でも、育つ環境が異なれば表現型は異なりますし、同じ人でも10 代の頃と40 代の頃では表現型が異なります。ライフスタイルを変えたら体型が変わるというのも、環境を変えたことで表現型が変わったということです。つまり、【体質(表現型)=「生まれ持った遺伝子」×「環境」】 となるのです。 この表現型の仕組みを理解していると、ダイエットでよくある悩みも「変えられるもの」と「変えられないもの」を分けて考えることができます。 例えば同じ食べ物を口にしていても、人によって太りやすかったりやせやすかったりする不思議な現象も、「代謝に関する遺伝子が異なること」そして「普段の生活習慣によってその人の代謝が変わること」が理由として考えられます。 遺伝的要因の1つがミトコンドリア。細胞の中にあるミトコンドリアは、世代にわたって受け継がれ、後世の代謝に影響するといわれています。つまり、今日の私たちが食べているものがどう身体に吸収されるかは、私たちの先祖が何を食べてどんな生活をしていたかに影響されるということ。 この生まれ持った土台に、私たちが何を食べてどんな生活をしているかで環境刺激が加わり、今日の代謝の表現型ができています。受け継がれてきたミトコンドリアの遺伝的要素は、私たちがすぐに変えられることではありません。しかし、その土台に応じて今日の生活を変えることで、表現型をある程度変えていくことはできます。 遺伝子とライフスタイルの掛け算は千差万別。つまり、最高のダイエットのやり方も人によって異なるということ。この表現型の基本を理解していれば「万人に効くたった1つの正解なんて存在しない」ということがお分かりいただけるでしょう。 遺伝的要素はそのままに、それを活かしながら環境的要素を変えていく。これが、「自分にピッタリの24時間やせる身体づくり」の根本にある考え方なのです。 ■変えられない性格に合った方法を選ぼう 体質だけでなく、自分の性格にも「生まれ持った遺伝子で決まるもの」と「環境で変わるもの」が存在します。宮城音弥先生が提唱した「心の四重同心円構造」というもので、まとめると、図のようになります。 生まれ持った遺伝的性格を「気質」と呼びます。私はこれを個性だと解釈しています。 環境で変わる性格は3層構造になっていて、気質のすぐ上にかぶさってくる「狭義の性格」は、人間として生まれてから最初に育つ性格で、親などの養育者の影響を受けて形成されます。「三つ子の魂百まで」といわれるように、成人してからもなかなか変わることのない性格です。 狭義の性格を包むのが「習慣的性格」。社会に出た時に形成されるもので、日常の中で身近な人々の交流などを通じて形成されます。「周囲の人々とどう接するか」という意識的な態度のことで、友人を怒らせた時に素直に謝るかどうかなど、自分の意志で変えることができます。 そして1番外側にある「役割的性格」は、さまざまな場面に応じて意識的・無意識的に変えながら適応するために形成される性格です。家では優しいお父さん・お母さんだけれど、職場では厳しい上司として振る舞い方を変える、といったように役割に応じて柔軟に変えることができます。 外側の層ほど変えやすく、気質と狭義の性格というか個性は変えることが困難です。そのため、「生き方改革をしよう !」「ライフスタイルを変えていこう !」と思い立った時に、「変えるのが困難な個性・気質を変えようとしないこと」が大切です。 時には諦めも肝心。思い通りに変われない自分のことを責めないでください。自分の個性だと受け入れて、柔軟にやり方を合わせていきましょう。 例えば、細かいことは気にしない大雑把な気質で記録などが苦手な人が、レコーディングダイエットを始めるとしましょう。カロリーや栄養バランスを計算して記録する生活には他の人以上に労力を使うため、それを楽しんで続けるのは困難です。 「頑張って習慣化しよう、興味を持つようになろう」と気質に逆らおうとするのではなく、写真を撮るだけや記録なしで済む方法を選ぶほうが、すんなりと新習慣として馴染むでしょう。 理想の食事でいえば、数字で細かく計算する方法よりも毎食写真を撮ってざっくり確認する、といった具合に自分の気質に合わせることができます 運動を例にすれば、一人で黙々と集中してやるのが苦手で飽き性の人がランニングを始めるとしましょう。テスト勉強も、友達とマクドナルドで一緒にするのが好きだったようなタイプの人です。そういう人が一人で淡々と同じコースを走るようなダイエットを始めても、その時間が苦痛になってしまいます。 続けられないことを「怠け者だからだ」と責めなくて大丈夫。それより、誰かと予定を合わせて走ったり、ランニングイベントに参加したり、毎日違うコースで街を探検してみるようにすると、ランニングに行くこと自体が楽しみとなり続けやすくなるでしょう。 筋トレでも、渡されたプログラムを黙々とやるのが好きな人、すぐ飽きてしまうので毎回違うエクササイズをやりたい人、一人で集中してやりたい人、誰かと話しながらやりたい人、それぞれ「1番楽しく続けたくなる方法」が異なります。 まるで別人にでもなるかのように何でも自分のなりたい姿を描いて目指すのではなく、自分の気質・性格を理解して「気質は変えられない」「変えられるものだけ変える」を軸に置きながら、自分に合ったやり方・ペースを選びましょう。 文/mikiko パーソナルトレーナー|自身の失敗経験を元に個人差や体質を重視した『mikiko式フィットネス論』を提唱|身体と人生観が変わるフィットネス哲学で、一生ブレないための視野と学びを発信。著書『ニュージーランド式24時間やせる身体をつくる ベストセルフダイエット』(Gakken)。
mikiko