「共同親権」導入案、衆院で可決も法的に未整備な状況露わに
離婚後の子どもの親権を父母双方に認める「共同親権」の導入を進める民法改正案について衆議院は4月16日、本会議で可決した。可決を前に同院法務委員会では、立憲民主党など野党が、共同親権の導入によりパスポートの入手がスムーズに行かなくなったり、教育支援が受けられない状態になったりする恐れなどの、想定されるトラブルについての質疑を展開。DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害当事者や弁護士の参考人招致も行なわれた。自民、公明、立憲、日本維新の会の4党が「父母双方の合意が真意であることを確認する措置を検討すること」などを付則で盛り込んで法案を修正し、合意した。
同委員会では与野党の委員が活発に討論した。与党側では自民の谷川とむ委員が「子の連れ去り防止のために」として共同親権の導入を要求。「DVや児童虐待があり、残念ながら離婚というものを否定しないが、できるだけ離婚ができないような社会になっていく方がいいと思う」などと述べた。 一方、野党による質疑では法的に未整備な状況が露わになった。 共同親権下では子どもに関することを決める際、原則として父母の合意が必要だ。ただし、日常の行為と「急迫」の事情がある場合には単独での親権の行使が可能。これまで弁護士やDV被害を受けた離婚当事者などからは、親権者の同意や合意をめぐり、同居親が一人で決められる範囲と、同居親と別居親が共同で決めなければいけない範囲の線引きがはっきりしない場合にトラブルが生じる可能性が指摘されてきた。 立憲民主党の枝野幸男議員は、子どもが海外への留学や修学旅行でパスポートを取得する際に親権者の同意を必要としていることについて「(共同親権でも)教育の範囲ととらえ、監護権を持つ者が単独で可能にすべきだと考える」と訴え、国の見解を尋ねた。 法務省側は「共同親権の場合は父母共同で同意していただくことになる」と答弁。これに枝野議員は「パスポートを取るのは教育の範囲である」と指摘したが、国側は「旅券の申請は両親の合意によるもの」との答えにとどめた。 枝野議員は、共同親権導入後の医療機関において、急迫な時には監護権者のサインにより子どもが緊急の手術を受けられるとされる点についても問い質した。 現行の単独親権の下でも一方の親から「同意していない」として医療機関にクレームがついた裁判例がある。枝野議員はこれを紹介したうえで、親の同意についての確認範囲がはっきりしないために大混乱となる可能性が解消されていない点を指摘。「大前提の準備ができていない。(法案が)生煮えだ」と批判した。