【ドラマ『パリピ孔明』スペシャルインタビュー】向井理、森山未來が語る『パリピ孔明』と、それぞれの『三国志』体験。孔明への想いとは?
諸葛孔明(しょかつこうめい)が現代日本の渋谷に転生して音楽界で大活躍するフジテレビ系水10ドラマ『パリピ孔明』(毎週水曜 後10:00)。平和な現世で2度目の人生を生きる諸葛孔明を演じる向井理さん、そして三国志オタクでライブハウスのオーナー・小林を演じる森山未來に、それぞれの「三国志」体験や孔明への想い、ドラマの裏話などを伺いました。 ――向井さんは諸葛孔明、森山さんは『三国志』オタクでもある小林役。オファーを受けたときの印象は? 向井理(諸葛孔明役/以下:向井) 諸葛孔明という名前は、もちろん知っていました。2009年の映画『レッドクリフ』とか、子どものころに『三国志』の漫画も読んでいましたので。ただ、歴史上の人物なので、身近な存在というわけではなかったです。ありがたい話ですけど正直、なんで自分にオファーをいただいたのか、わからなかったです(笑)。原作の漫画を読んでみると、変に奇をてらって笑いをとるより、この作品の孔明は周りの化学反応を見ている人なのかなと思って、自分としては新しい系統のドラマになるだろうという印象を持ちましたし、漫画のファンの方がどれだけ評価してくれるのか、ハードルは高いですけど楽しみに思いました。 森山未來(オーナー・小林役/以下森山) まず原作の漫画を読ませていただいたんですが、アーティストの成長物語が楽しいと思いました。向井くんと一緒に仕事をさせていただくのは初めてでしたし、演出の渋江(修平)監督は独特な世界観を持っている方で、ここまで振り切っている作品に関われるのは面白そうだなと。現場では、圧倒的に孔明のセリフが多くて、長く喋りまくらないといけないんですが、でも向井くんは噛まない(笑)。プライベートで会ってはいましたが普段は、どこか、何を考えてるかわからない、掴みどころのなさもあって。もちろん、それは悪い意味ではなくて、それが孔明というキャラクターにハマっていると感じます。 ――お二人とも子供のころから『三国志』に触れておられたそうですね。 向井 とても分厚い『三国志』の漫画を、兄が読んでいたんです。 森山 お兄さんそんなの読んでいたの? めちゃくちゃ好きなんだね。 向井 それで面白そうだなって思って。とにかく登場人物が多くて、壮大すぎるので……途中で「この人、誰だっけ?」となるので、漫画は助かりますね。 森山 僕は小学校の同級生が横山光輝(よこやまみつてる)さんの『三国志』を読んでいたのが気になって、それが図書室にあったので僕も読み始めたら止まらなくなったんです。そこから『水滸伝』(すいこでん)とか『項羽と劉邦』とか、横山光輝さんのほかの中国漫画を読みまくりました。『三国志』には正史と、後から小説になった『三国志演義』があるんですけど、横山三国志は、その『三国志演義』にあたりますね。今回、ドラマに出演するにあたって、実家にある漫画全巻を送ってもらって読み返して臨みました。10万本の矢を10万「イイネ」にするとか、原作『三国志演義』からとてもうまく取り入れて活かしているなと感じますね。 ――森山さん自身も三国志ファン、演じられている小林が三国志オタクという面白い設定ですね。 森山 小林はアーティストをサポートする側ではあるんですけれど、この作品の中で『三国志』を深く知っているし、その世界観の中で生きる孔明を面白がりながらも、どこか俯瞰で見ている。元々、僕もすごく『三国志』が好きなので、原作からどうアップデートするか。いっそ、お客さんを置いていってしまおう、というぐらいの気持ちでした。もちろん物語の根幹に食い込むようなところではなくて、孔明が戦略を話しているときに間に三国志ネタを挟み込む。単語などはわからなくても話が通るところだけにしようとプロデューサーとも相談しながら、そこだけは力を入れました(笑)。 ――向井さんは、孔明っていう人物はどう捉えていたでしょうか。 向井 もちろん凄い人なんですけど、ただ単に天才軍師ではなかただろうなあと思っていました。最初に劉備・関羽・張飛がいて、彼はそこに後から入ってくる人ですよね。そのなかで、劉備という人、蜀の国を支えなきゃいけない。そこには主従関係だったり、複雑な人間関係があるなあと思いながら読んでいた気がします。 ――ドラマの孔明の衣装について教えていただけますか? 向井 数回衣装合わせをしました。肩パットを入れたり、袖の部分もボリュームをつけて迫力を出したり……。高いヒールの靴を履いていますが、あのボリューミーな衣装で、クラブの中で歩いてるわけですよね。そうすることで現代人たちとの圧倒的な差別化を図り、孔明のいうことが逆に説得力が増すという。それが今回の孔明には必要だと思いました。あの帽子は重くはないんですけど、演出の渋江監督の考えで、計略を考えているときなどは頭から煙を出そうということになりました(笑)。 森山 帽子と靴で2m超えてますからね。原作からそれをどう飛躍させるかっていう上で考えて、孔明だけではなくいろんな人のキャラクターをどういうふうに色分けするかっていうのはすごくいろいろ考えていらして。それはすごく素晴らしかったと思うんですけど、お金のかかり方が違いますよね。あの扇も30万円ぐらいすると聞きました(笑)。 ■「大河ドラマで演じさせていただいた徳川秀忠には思い入れが強いです」(向井) ――このドラマでは、ほぼ孔明ひとりが活躍していますが、お二人は、歴史上の人物で印象的な人はいますか。 向井 僕は2011年大河ドラマ『江』で演じた徳川秀忠(とくがわひでただ)には思い入れが強いですし、凄い人だと思っています。自分でもいろいろ調べましたが、ひと昔前は秀忠って凡庸(ぼんよう)だったと言われていましたよね。ただ最近は政治家として有能だったといわれていますし、だからこそ江戸時代が長く続いたんだろうなって尊敬しています。織田や豊臣と違い、徳川が15代も続いたのは2代目が優秀だったのも大きいと思います。孔明もそうですが、その時代に、その人が何を考えて生きていたのか想像して考えるのは面白いですね。 森山 僕は子供のころにみんながよく読んでいた偉人伝で、最初に読んだのがイエス・キリストだったんですよ。今でいえば、ロックスターのような存在で、宗教的な観点というより、彼自身がその時代に何かを変革しようとして、結局は頭がおかしいやつとして扱われて処刑されますが、その教えが今でも世界中に広まっていて……。実際どういう人だったんだろうと考えるし、すごく面白い人だったんじゃないかと思います。直接、影響を受けているわけではないですが。聖徳太子が実際はどういう人だったのかとか、考えてしまいますね。日本という国にしても、色々なミクスチャで成立しているから面白い。本当に歴史はミステリアスです。だから面白いんでしょうね。 取材・文/上永哲矢、写真/中野理