女子プロレスの甲子園!? この夏、たしかに「青春」を見た…東京女子プロレス夏のトーナメントがエモい
東京女子プロレスのシングル・トーナメント「東京プリンセスカップ」の決勝戦が、8月25日、後楽園ホールで開催される。元週刊プロレスの記者であり、東京女子プロレスの選手4人の人生を綴った『プロレスとアイドル』の著書である小島和宏が、大会前にその見どころ、注目ポイントを紹介する。 【写真】第11回東京プリンセスカップ抽選会 近々、話題の女子プロレスドラマが配信される関係で、今年の夏は毎週のように昭和と平成のレジェンド女子プロレスラーの取材をしてきた。同じ時代を生きてきた人間として、あの時代にタイムスリップできる取材は楽しいものではあったが、同時進行で令和の女子プロレスも取材しているので、もう頭がパンクしてしまいそうになった。 同じ女子プロレスでも昭和と平成ではガラッと様変わりするし、平成と令和でもまったく景色が違う。つまり昭和と令和を比べたら、そこにはとんでもないギャップが生じるわけで……金曜日に昭和のレジェンドの話を聞いて、土曜日に令和の女子プロレスを会場で取材する、なんて日々が続くと「えっ、えっ、どっちも同じ女子プロレスだよね?」と脳みそが混乱してしまうのである。 もちろん、ぼくは昭和の女子プロレスも平成の女子プロレスも大好きだったし、令和の女子プロレスだって面白いから毎週のように試合会場に足を運んでいる。どっちがいいとか比較するのはナンセンスの極みなのだが、昔の女子プロレスにあって、最近の女子プロレスではちょっと希薄になっているかも、と感じるものがある。 それは「青春」だ。 昔は25歳定年制という不文律があったから、トップをとっても王座から転落したら、もう引退せざるを得なかった。本当に短い青春時代をリングで完全燃焼するのが昭和の女子プロレスの美学だった。 そんな不文律はとっくに撤廃され、いまは自由に闘えるようになった。青春を燃やすものではなく、人生を賭けるものに女子プロレスラーの生きざまも変わっていった。このあたりを飲みこめるようになると、令和の女子プロレスをより楽しめる。 ただ、この夏、たしかに東京女子プロレスのリングで「青春」を目撃した。 7.20後楽園ホールで実現したプリンセスタッグ選手権試合。鈴芽&遠藤有栖に荒井優希&宮本もかが挑んだ一戦。試合を前にチャンピオンチームを取材したのだが、プロレスでありがちな「てめぇら、ぶっ潰してやる!」とか「ウチらが最強なんだよ!』といった煽りはゼロ。それどころか笑顔を浮かべながら「ずっと闘いたかったのでうれしい! いい試合にしたいです」。 なんという爽やかさ! これで試合が緩いものになってしまったら困りものだが、闘いは爽やかなのに激しい好勝負に。機動力で勝るチャンピオンチームが見事に防衛を果たしたが、試合後半、突如として覚醒した荒井優希が無双状態でリング上を制圧したシーンが印象深い。SKE48の選抜に復帰したことで、このところ試合数が減ってきている荒井優希。その影響なのか、序盤はなかなかエンジンがかからないように見えたが、とんでもない瞬発力でチャンピオンを薙ぎ払う姿はまさに圧巻だった。 試合後、健闘を称え合いながら両チームは抱き合った。 あぁ、これはまるで女子プロレス版の甲子園ではないか! 大会のスタートが午前中というシチュエーションも相まって、そう思ってしまった。これが令和の女子プロレスならではの「青春」である。