「自分の走りはOLのブロックのおかげ」と話す法政大のエースRB 甲子園ボウルでは「OLを日本一にする」ため走る
「関東の大学で関西を倒したい」と法政へ
廣瀬のアメフトのキャリアは小学2年生から始まった。いとこの誘いで「世田谷トルネード」の練習の見学に行き、自然な流れでチームに参加することになった。「あのときはフットボールが楽しくて仕方なかったです」。父の修久(のぶひさ)さんが日体大アメフト部のOBで、中学生チームのブルーサンダースでコーチしていたため、家でも自然とアメフトの話題が挙がっていたという。 高校は、父と同じ駒場学園に進学。その頃、早くから法政に憧れがあったという。「関西に行くっていう考えはまずなくて、関東の大学で関西を倒したかったんです。そうするとやっぱ法政かなって。ずっとカッコいいなと思っていました」。そして高校2年の冬、地区選抜の対抗戦に出場した際に法政大から声がかかり、進学を決めた。3年生の秋には、高校王者の佼成学園を相手に28-35と激闘を演じたが、一歩及ばなかった。
試合中に光る冷静さ 父の教えの賜物
高校時代、廣瀬はすでにRBとして頭角を現していたが、大学進学後もRBとしての技術を磨き続けてきた。「1年生の頃はキックカバーがほとんどで、2年になってからRBで出られるようになりました」。去年は1学年上の新井優太、岩田翔太郎とスターター争いをした。 「3年の秋ごろにRBとしての役割を理解し、試合でそれをどう体現するかを徹底して考えるようになったんです。それが今につながってると思います」。RBの哲学を極めた廣瀬は、最終学年の今年、4年生として責任を持ってフィールドに立つようになった。 一方で、「今日も、中川(達也、3年、明治学院)がいい走りをしてくれて助けられました。僕は『形式上の周りが作り上げたエース』って感じで、まだまだ役割は果たせていないかなと感じています」と苦笑い。おごらず、愛嬌(あいきょう)があり、物腰も柔らかい。質実剛健な走りとは対照的なキャラクターだ。 廣瀬のプレーぶりには冷静さが光る。走りを見ていると、常に精神状態が安定していて、局面でミスもしない。どんな相手に対しても、コンスタントに距離を稼ぎ出す安定感は出色だ。試合の流れに左右されない心の強さは、幼少期からの教育の賜物(たまもの)だという。「もともとモメンタムを持たないように教えられてきたので、試合中に気分が上下しないのが癖になっています。苦しい展開のときには『誰かがやってくれる』と他責になるのではなく、自分で打開しなければならないと考えるようには意識しています」 RBとしての理想は、3学年上の星野凌太朗(現・東京ガスクリエイターズ)だ。「1人で試合を変えられる、絶対的なエースを同じチーム内で見ることができました。本来あるべきRBの姿を学ばせてもらったと思っています。ただ、星野さんの走りは理屈じゃないので、上手すぎて速すぎて。良い意味で参考にはなりませんでしたが……(笑)」
「立命とはOL勝負 法政のOLを日本一に」
宿敵の関学大を破り、ラストイヤーも残すは甲子園ボウルのみとなった。最後の舞台で対戦する立命館大もまた宿敵関学を破って関西リーグを勝ち上がってきた。廣瀬はどんな思いでこの試合に臨むのか。 「正直、立命館に対する思いは特にないんです。自分の役割を徹底し、チームの勝利に貢献することだけが目標です。でも、OL勝負と言われていますし、相手のRB陣も豪華というところで……。法政のOLを日本一にするべく、負けじと食らいつきたいたいと思います」 甲子園でも、謙虚な語り口とは真逆の図太い走りが火を吹くだろう。試合後、廣瀬は笑っているだろうか。
北川直樹