高校の登山部員、15年で1・6倍…アウトドアに親しみ・災害多発で「自活」意識も
同部では運動部には珍しく兼部も認めており、平日は別の部活動や生徒会活動に充てることもできる。顧問の楠田和宏教諭(59)は「15年前は1チーム組むのが難しいほど部員は少なかったが徐々に増えてきた。保護者がキャンプなどに親しんだ世代で、小さい頃から家族でアウトドアを楽しんでいる生徒が多い。高校から新しいことを始めたい時に、特別な技術や経験を必要としない登山が選ばれているのではないか」と語る。
運営課題も
全国高校体育連盟によると、加盟する部活動の部員数は2009年度には約121万人(男子約76万人、女子約45万人)いたが、今年度は105万人(男子約68万人、女子約37万人)で1割以上減少。一方、登山部は6973人(男子5573人、女子1400人)から、1万1147人(男子8338人、女子2809人)と、1・6倍ほどに増えている。
愛知県豊川市の豊川高校教諭で、同連盟登山専門部の佐橋秀男事務局長(58)は、価値観の多様化により、サッカーなど昔から定番のスポーツではなく、勉強や趣味との両立が比較的できやすい登山に注目が集まっているとみる。さらに、11年の東日本大震災をきっかけに自ら食事を作るなど自活の重要性が見直され、衣食住に関する知識が身につくことや、コロナ禍でのキャンプブームも人気を後押ししていると考えている。
ただ、登山部を持つ学校数自体は近年減っていることに危機感も感じているという。佐橋さんは「部員数が増えている一方、顧問など指導する側は高齢化しており、廃部になっている学校もある。休日泊まり込みで練習に同行するなど負担は軽くない。部員数が増えた登山部の運営をいかに続けていくかは今後の課題だ」と話す。
遭難最多「余裕のある日程で」
登山には遭難などの危険もある。警察庁によると、昨年1年間に全国で3568人(前年比62人増)が山で遭難しており、2年連続で過去最多となった。このうち、死者・行方不明者は335人となっている。