ゴールドマン、「不吉」なドル高で新興国が利下げ見直し迫られる恐れ
(ブルームバーグ): ドル高が新興国市場にとって「不吉」なものになる恐れがあり、ドル高の影響を受けやすい新興国の当局が自国通貨を守るために利下げの見直しを迫られ得ると、ゴールドマン・サックス・グループの通貨・金利・新興市場戦略のグローバル責任者、カマクシャ・トリベディ氏が指摘した。
同氏は「ドル高は今年の早い時期は力強い経済成長と関連していたが、今はタカ派的な政策や高インフレとより強く関連するようになる恐れがある」とした。この取り合わせは新興市場に全く新しい難題を突きつける。
トリベディ氏は電話インタビューで、「このようなより悪質ないし不吉なドル高が進めば、世界で最も脆弱(ぜいじゃく)な地域で一段の弱さがみられるだろう」とし、「ドル高に対する感応度が非常に高い新興国市場がそうなりがちであり、国内の政策設定に直ちに影響を及ぼし得る」と語った。
同氏はインドネシアや韓国、中国を含む国々はより大きな圧力を受ける可能性があるが、より広範囲に影響は及ぶだろうと述べ、先週のメキシコとブラジルの金利決定を引き合いに出した。メキシコは金利を据え置き、ブラジルは利下げペースを0.25ポイントに減速させた。
「両国ともグローバルなマクロ情勢と市場環境に対応して」国内情勢が必要とする以上に「タカ派的な措置を取ったことはほぼ間違いない」とトリベディ氏は述べた。
米利下げ時期を見極めようとしている市場は15日に発表される米消費者物価指数(CPI)に注目している。トレーダーは11月までの利下げを織り込んでいるが、今年の初めには年内最大6回の利下げを見込んでいた。米利下げの遅れはドルを下支えし、他の国・地域の中央銀行を圧迫している。こうした中銀の当局者は利下げによる景気支援か、金融引き締めによる通貨防衛かという選択を迫られている。
トリベディ氏は米CPI統計がドルや多くの通貨の方向性を決定する可能性が高いものの、「われわれの基本シナリオは今後数カ月で欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行が米連邦準備制度理事会(FRB)よりも早く、そして恐らくより大幅な利下げを行い、その結果、ドルはより高い水準により長くとどまるというものだ」と説明。