責任ある企業行動における「人権・環境デューデリジェンス」をどう考えるべきか
記事のポイント ①EUで企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)が暫定合意した ②EU域内外企業にバリューチェーンでの人権・環境DDの実施と開示を義務付け ③サステナ経営の基盤の取り組みとして、組織的・戦略的な対応が求められる
2023年12月14日、EU理事会と欧州議会は域内の企業に対し、企業活動における人権侵害や環境破壊のリスクを特定し、是正措置を講じるよう求める「企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD:Corporate Sustainability Due Diligence Directive)」で暫定合意しました。企業は、サステナ経営の基盤の取り組みとして、組織的・戦略的な対応が求められます。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見) CSDDDは、企業に対して、バリューチェーンでの人権・環境に関するデューディリジェンス(自社の事業活動における実際の及び潜在的な負の影響の特定、防止、軽減、救済を含む一連の取組。以下、DD)の実施・取組についての開示を義務化するものです。 人権分野では、バリューチェーンでの児童労働や強制労働、雇用形態や性別、人種による差別など人権リスク全般が対象になります。環境分野では、生物多様性の毀損、水質や大気汚染、有害な排出物、過剰な水の消費など広範な環境リスクが対象になります。 気候変動については、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるパリ協定に適合した脱炭素計画を策定し、履行することが義務付けられます。同計画が企業の取締役の変動報酬(存在する場合)に連動していることも必要です。 対象は、従業員500人以上、全世界売上高1億5000万ユーロ(約238億円)以上のEU域内企業(約1万3000社)などです。金融機関は対象外ですが、将来的に同様の義務が課される可能性があります。 EU域外企業も指令発効の3年後にEU域内で同額以上の売上高があれば対象となります(EU委員会が対象企業リストを公表予定)。それに加えて、CSDDD対象企業とバリューチェーンを通して取引関係がある中小企業にも影響が及ぶことが想定されます。 今回の合意はあくまでも暫定的なものであり、発効までにはさらなる変更が加えられる可能性があります。EU加盟各国は、指令の発効後2年以内に国内法の整備が必要になるため、実際に企業に義務が発生するのは2026年頃になると予想されます。 違反した場合の罰金は、対象企業の世界全体での売上高の5%に上る可能性があり、企業にとっては厳しい内容となりそうです。 *この続きはオルタナオンラインでお読み下さい。 (この続きは) ■CSDDDとCSRD(企業持続可能性報告指令)における人権・環境DD ■国際社会は以前から企業に自主的な人権・環境DDを求めていた ■デューディリジェンスの6つのプロセス ■人権・環境DDを持続可能な社会の発展に結びつけよう