あの崎陽軒に負けずとも劣らない「老舗の名店」【みんなが知らない、シュウマイの実力】
②「野毛」エリア 野毛は横浜の飲み屋の聖地と言われ、最近ではニュータイプの居酒屋も増え、若者が昼飲みを楽しんでいる姿をよく見かけます。 ですがその合間には、横浜を代表する老舗中華料理店が点在し、伊勢佐木町とも異なる個性を持つ"シュウマイ遺産"が隠れています。 ●萬福 1968年創業の、町の食堂および居酒屋的中華料理店。現在はリニューアル移転して、野毛と伊勢佐木町の間に流れる大岡川の側に店を構えますが、以前は日ノ出町寄りの一角に立地。今の整った雰囲気もいいですが、かつての昭和の香りがぷんぷんする店構えと店内も懐かしいです。 シュウマイは大ぶりで、硬めのガッチリ系。具材は豚中心でシンプルながら、海鮮具材の旨味も加え、複合的なシュウマイの美味しさが感じられます。個人的には、瓶ビールと最も合うシュウマイのひとつで、中華つまみの「ネギチャーシュー和え」と一緒に頼むのがベターです。 ●新雅 萬福からさほど遠くない、桜木町と関内のちょうど中間ぐらいに建つ老舗中華料理店。広東料理の象徴的料理のひとつ「巻き揚げ」や「あんかけ焼きそば」が看板料理のようですが、シュウマイは中ぶりで豚肉中心、噛み応えは程よいしっかり系。皮も美味しく、それがよりダイレクトに味わえる「ワンタンスープ」も絶品です。 ③「山手」エリア 実は最も歴史のある"シュウマイ遺産"は、山手エリアに点在しています。横浜中華街のある山下エリアから、トンネルを抜けて本牧エリアに抜けるこの一帯は、駅から少し離れていますが、その分、昔ながらの横浜市街地の雰囲気を、色濃く残しているとも言えます。 ●奇珍楼 本牧通りをトンネルを抜けてすぐにある、横浜を代表する老舗中華のひとつ。1918年創業ですが、現在の場所へ移ったのは1942年とのこと。横浜中華街の老舗よりも歴史があります。 豚肉シンプルスタイルの、小ぶりでしっかり目のシュウマイは、甘みが特徴。これは他の料理にも通じており、砂糖などの甘い味付けが高級だった時代を忍ばせます。その甘さが、なんとも懐かしいのですが......残念ながら現在は閉店。今はなき"シュウマイ遺産"となってしまいました。 ●華香亭 本牧通りを奇珍楼からさらに本牧方面へ進み、並行に走る脇道沿いに入ると、レトロでありながらどこか洋風な店構えが出現。創業は1912年で、奇珍楼よりもさらに古い、横浜市内でも最古の中華料理店のひとつと言われています。 ここは、希少な定食スタイルでシュウマイが食べられます。「シュウマイライス」を注文すると、シュウマイ、ライス、おしんこ、スープが登場。シュウマイは大ぶりでゴロりとした食感の、豚肉と海老のプリッとした食感と旨味が見事に融合。おしんこがさらに白いご飯を進めてくれます。 * * * 今回紹介した"シュウマイ遺産"に共通するのは、豚肉中心のシンプルスタイル、それでいて中華料理でありながら和食的なシンプルさも感じられる点。一方、創業100年近く歴史のある店も多いので、奇珍楼のようなことが、いつ起こってもおかしくないのが実情です。 「いつまでもあると思うな親と"シュウマイ遺産"」。皆さんも横浜に立ち寄ったら、崎陽軒や横浜中華街だけでなく、是非、老舗中華店でシュウマイを注文してみて下さい! 文・写真/シュウマイ潤