崎陽軒だけじゃない「老舗の名店」たち【みんなが知らない、シュウマイの実力】
連載【日本シュウマイ協会会長・シュウマイ潤の『みんなが知らない、シュウマイの実力』】第10回 崎陽軒は日本を代表するシュウマイの老舗メーカーだが、それよりも古い老舗の名店は存在し、味わいも崎陽軒とは異なる美味しさがある。その名店を、シュウマイ研究家のシュウマイ潤が紹介します。 【写真】崎陽軒とは異なる美味しさのある名店のシュウマイ * * * 神奈川は横浜のシュウマイは、崎陽軒だけにあらず――。それは第1回の連載「崎陽軒のスゴさは『革新』と『挑戦』にあり!」を読んだ方は、薄々感じられていると思います。 崎陽軒は横浜の中で現存する老舗の代表格ではありますが、あくまで駅弁販売の延長で始めたものであり、その味は横浜中華街(当時は南京町)の料理人の手によって開発されたものです。 言い換えれば、崎陽軒の「シウマイ」の原型といえる、より遡(さかのぼ)った老舗中華料理店で提供される"シュウマイ遺産"と呼べるものが横浜には現存します。 その代表格のひとつが横浜中華街なのですが、これは第6回の連載「横浜中華街のシュウマイを食べたことがあるか!」で紹介したので、それ以外の横浜エリアの名店と、そこで提供される"シュウマイ遺産"をいくつかご紹介したいと思います。 ①「伊勢佐木町」「阪東橋」エリア 伊勢佐木町は、JR関内駅から続く「イセザキ・モール」(伊勢佐木町商店街)を中心に、昔懐かしい横浜の風情を色濃く残しています。 そこは横浜中華街と並ぶ"横浜シュウマイ発祥の地"といえる場所で、おそらく日本で初めて「シウマイ」という文字を店頭に掲げた中華料理店「博雅亭」が、1899年に伊勢佐木町に開店しました(現在は閉店)。 そしてその周辺は、横浜でも歴史ある中華料理店が点在するエリアであり、そのなかでも大正、昭和初期の面影を残す"シュウマイ遺産"を出す店が存在します。 ●玉泉亭 1918年創業。当初は店舗は曙町にあったそうですが、戦後に現在の伊勢佐木町5丁目、イセザキ・モールから少し入った場所に移転したそうです。 昔ながらのスタンダードな中華メニューが並び、横浜名物「サンマーメン」もこの店では人気。シュウマイは素朴な比較的小ぶりサイズながら、肉の旨味に魚介系の旨味のアクセントが効いた納得の一品。つまみや副菜にぴったりの存在感です。 ●酔来軒 伊勢佐木町よりもさらに阪東橋寄りのエリアは、故・桂 歌丸師匠ゆかりの阪東橋通商店街を中心とした、ディープな商店街や飲食店がひしめきあっています。その中で圧倒的な存在感を示すシュウマイを出すのが、酔来軒です。 店名を冠した、チャーシューやもやし、メンマ、目玉焼きが乗った「酔来丼」が名物ですが、シュウマイもそれに並ぶ名物。椎茸がまるごと下に引かれ、その上に豚肉のあんが乗り、皮に包まれている唯一無二のビジュアルとインパクトです。 味わいは椎茸が主役ながら、豚肉と見事に合間った旨味が口中に広がり、これまた唯一無二の印象を残してくれます。 ●龍鳳 伊勢佐木町商店街のメインストリート沿いの2階部にある、このエリアの中華料理店の代表格のひとつ。タケノコ料理や牡蠣チャーハン、焼き餃子が有名ですが、シュウマイもそれに並ぶ名品です。 大ぶりな豚肉中心のシュウマイは、しっかりとしながら硬すぎず、肉のもっちり感も感じられ、長ネギが絶妙な香りと風味を追加。上品ながら、豚の旨味の余韻が心地よく感じられます。