フジテレビが「上場廃止」? 米投資ファンドの“MBO”要求にどうあらがうか
フジテレビがホリエモン(堀江貴文氏)に買い占められたのは20年近く前のことだが、今度の相手は投資ファンドだ。米国の「ダルトン・インベストメンツ」がフジ・メディア・ホールディングス(FMH)に対し、経営陣が参加する買収(MBO)と非公開化を求める書簡を送ったと報じられたのは5月30日。ダルトンの持ち株は6.55%だ。全国紙経済部の記者が言う。 【写真をみる】約20年前にも「有名人」による手痛い“買収劇”を経験したフジテレビ
「書簡では、資産売却によってFMHの経営陣が自社を買収。株をダルトンが20%、残りを他のファンドや経営陣、従業員に分配するとある。また、非公開化した上でFMHはコンテンツ事業などに注力するべきだとしています」
フジテレビはなぜ狙われたのか
狙われる理由は何なのか。 「同社の儲けの半分以上は不動産やホテル事業で、もはや放送事業がメインとはいえません。一方、2000億円近い現金及び預金・有価証券と5000億円近い不動産を保有しています」(同) ダルトンからすれば、余計な資産をため込んだ会社にしか見えないのだろう。もちろんFMHも素直に応じるわけがない。同社は31日、MBOを否定し、放送法などにより、特定の株主が3分の1以上の株式を保有することはできないと発表している。 「また、放送局は外国資本が20%以上の株を持とうとした場合、株主名簿への記載を拒むことができます。ダルトンに対しては二重の防御壁があるといえます」(同)
株主にとっては“悪くない提案”
もっともFMHの主張がこのまま通るとも限らない。 「ダルトンの提案は既存の株主にとって悪い内容ではありません。例えばFMHの第4位の株主(3.33%)の文化放送。同社は、フジサンケイグループの一員ですが、聖パウロ修道会が株の30%を握っている。修道会は文化放送の経営にあまり関心がないといわれており、MBOは利益にもなる。修道会次第で文化放送の持ち株はどう動くか分かりません」(同) ダルトンは、6月の株主総会で社内取締役全員の再任反対を呼びかけるとしているが、次の総会も視野に入れているともみられている。そこで、FMHに聞いてみると、 「来年の総会については現時点でお答えできることはありません」(広報IR部) ホリエモンによる買収劇では、高い“授業料”を払った同社だが、ダルトンが突き付ける請求書も高そうである。 「週刊新潮」2024年6月13日号 掲載
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