会社トップの交代は株価に影響するか セブン&アイとクックパッドのケース
会社のトップ(代表取締役や代表執行役)の交代は、その会社の株価に影響するのでしょうか? 答えは、歯切れが悪くて申し訳ないのですが、影響する場合もあるし、しない場合もある、です。トップが交代することにより、会社の経営、そして業績に変化が生じることが見込まれる場合(例えば、著名なトップが退任し、そうでない人がトップに就任する場合や、トップが交代することにより、会社の経営方針が大きく変わる場合など)は、株価に影響が及ぶ可能性がありますが、そうでない場合は、株価への影響は見られないでしょう。
セブン&アイ・ホールディングスのケース
セブン&アイ・ホールディングスは7日「代表取締役の異動(退任)に関するお知らせ」を開示しました。言わずと知れた同社代表取締役会長・最高経営責任者の鈴木敏文氏が退任するという内容です。同社を長年率いてきた著名な経営者である鈴木氏の退任は、同社の株価に影響を及ぼすだろう、しかもマイナスの影響を及ぼすのではないかと思われました。 しかし、実際は異なりました。開示が行われた7日の同社株式の終値は4489円でしたが、翌8日は、一時4728円まで値を上げ、終値は4655円でした。同社は年3月8日、社外取締役で構成される指名・報酬委員会を設置する旨の「『指名・報酬委員会』設置に関するお知らせ」を開示しており、投資家はこの指名・報酬委員会が機能したことを評価したのだとする見方がありますが、実際のところはわかりません。ちなみに、同社は19日「代表取締役の異動に関するお知らせ」と「役員の異動に関するお知らせ」を開示していますが、いずれにも「指名・報酬委員会の答申を受け」と記載されています。 参考:セブン&アイ・ホールディングスの株価
クックパッドのケース
セブン&アイ・ホールディングスの適時開示において示されている情報はとても少なく、そこから株価への影響を見極めるのは困難かと思われます。同社の株価の変化は、適時開示よりもマスコミ報道の影響によるものなのかもしれません。日本を代表する会社の開示姿勢としては、果たしていかがなものかと思ってしまうのですが。 最初にセブン&アイ・ホールディングスのケースを取り上げましたが、株価への影響を見極めにくい、良くないケースだったかもしれません。そのため、次に、株価への影響を見極めるのが容易だったであろうと思われるケースとして、クックパッドのケースを取り上げたいと思います。 4年ほど前の適時開示なのですが、クックパッドは2012年3月30日「代表執行役の異動に関するお知らせ」を開示しました。同社の創業者である佐野陽光氏から穐田誉輝(あきた・よしてる)氏に代表執行役が交代するという内容です。創業経営者の退任という事実は株価に影響を及ぼしそうですが、実際にはほとんど影響は見られませんでした(開示が行われた30日の同社株式の終値は2458円だったのに対し、翌営業日の4月2日の高値は2,450円、安値は2425円)。佐野氏は引き続き取締役兼執行役として留まり、穐田氏は「創業者である佐野ともよく連携を取りながら、(中略)代表執行役としての責務を果たして」いくとされていたため、急に大きな変化が生じるわけではないと捉えられたのでしょう。 それに対して、同社が16年3月24日に開示した「代表執行役の異動に関するお知らせ」は、株価への影響が明らかでした。穐田氏から岩田林平氏に代表執行役が交代するという内容ですが、開示が行われた24日の同社株式の終値が2124円だったのに対し、翌25日は、一時1770円まで値を下げ、終値は1839円でした。その後も株価は低迷し、4月6日には1423円まで値を下げています。穐田氏は、同社の代表執行役に就任後、同社の業績を大幅に向上させており、その穐田氏の退任は同社の業績にマイナスの影響を及ぼすだろうと捉えられたのです。 参考:クックパッドの株価