クセがなく扱いやすい万能アドベンチャー

SUZUKI V-STROM 800

2023年の春に登場したVストローム800DEはオフロード志向の強いアドベンチャー。すばらしい走破性を生む足まわりを持っており、オンオフ満遍なく冒険できる夢多きバイクだ。だがその走破性の代償として車高は高く、一般的なスタンダードバイクに対して取り回しにはやはり難儀する。 【写真はこちら】「Vストローム800」の全体・各部・走行シーン、カラーは3色 今回のVストローム800はフロントタイヤをDEの21インチから19インチにし、サスもトラベル量を70mmも減らした150mmに変更。サス自体もシンプルなショーワのスタンダードグレードに。これでシート高は825mmと30mmも下がっている。オンロードでのツーリングに過剰なパートをカットして、実用的なロードアドベンチャーとして再セットアップした、といった印象だ。 ただ、サスは2世代くらい前のミドルVストロームたちほどのハードな味付けではない。オンロード志向が強いバージョンとはいえ、オフロード走行への意欲も残している。前後サスは低速で大きな障害物を乗り越えながら林道を走る時には非常にしなやかな動きでオフ車っぽく応える。 バネ自体は前後ともソフト目の味付けになっているからだろう。ダンパーもゆっくり動いている分には滑らかに減衰を立ち上げるが、速い動きに対しては硬めに立ち上がる。ショックそのもののグレードなのか、馴染みがついてないのか、DEの全レンジでのしなやかな動きとはかなり違う。ゆっくり動いている時のしなやかさからすると、突発的な衝撃はけっこう伝わる傾向だ。 まぁ、それでも乗り心地が悪いというわけではない。大きな凸凹やウネリに対する接地性、踏破力はやはりアドベンチャーモデルのもの。スタンダードスポーツでは真似できないゆとりがある。 また、それなりに大柄なバイクでありながら、峠道では素早く足まわりが落ち着くので、けっこう元気に身を翻せる。エンジンはフラットに82馬力を発揮する。これはDEと同じセッティングのようで、振動が少ない上に、トルクフルでとても扱いやすい。 パワーモードも3種類あって、気を遣わずにリニアにパワーを抽出できるのはダイレクトな「A」モードで、「B」は大きくスロットルを開けない限りパワーの立ち上がりが穏やかで、「C」はレインに相当するまろやかなツキをどの開度でも等しく実現する。ライディングアシスト機構としては、これにトラコンやABSなどもモード選択可能だ。 このVストローム800はDEに対してオンロード志向になっている、クセのない万能アドベンチャーだ。このクラスの中ではタフで丈夫な車体は十分魅力的だし、パワーも必要十分。優れた積載拡張性や気楽なライポジと取り回しやすさなど、旅に必要な性能はおしなべて優れたものを持っている。全体的に非常に実用的で使い勝手のいい等身大ミドルなのだ。