職場の“繊細さん”は「ほめて伸ばす」がコツ ほめる達人が教える、心に響く「浮き輪言葉」とは
失敗した相手をほめる「浮き輪言葉」
Z世代にとって、ほめられることが次へのモチベーションにつながるのは確かです。しかし、その一方、「はれ物に触るように扱われること」も彼らは嫌います。間違いや足りない点は指摘してほしい──。それが自分の成長につながると考えているからです。 失敗や間違いを指摘することは、正しいフィードバックです。ただし、話の順序や言葉選びには工夫が必要でしょう。西村さん直伝の「ほめメソッド」から代表的なものを一つご紹介します。 失敗して溺れている人間に、まずは浮き輪となるような言葉を投げかけて、安心させる。それが「浮き輪言葉」です。
西村「海で足を取られて溺れそうになると、誰でもパニックになりますよね。そんなふうに溺れかけている人間に、『何をやっているんだ』とか『足の動かし方が違う』と言っても、通じません。 とにかく一度、浮き輪につかまって、安心した状態になることが大切です。 それと同じで、失敗したことで頭がいっぱいの人に対して、いきなり失敗をとがめても萎縮させるだけで、いい結果にはつながりません。まずは、大丈夫だという安心を与えること。 例えば、『いい経験をしたね』『まだこのタイミングでよかったじゃないか』などと声をかけたり、自分の過去の体験談を話したりするのもいいでしょう。浮き輪言葉で冷静になった後で、次にどうするかをアドバイスすればよいのです」
「ほめる」をコントロールに使わない
また、ほめるときに注意したいのが、ほめることで「相手をコントロールしようとしないこと」です。期待通りに動いてほしいという下心は、必ず相手に伝わります。 西村「価値観の違うZ世代に対して、上の世代はとりあえずほめることで自分たちの思い通りに動かそうとしがちです。しかし、そんなほめ言葉はすぐに見透かされてしまうでしょうし、Z世代からの信頼も失うことになります」 「ほめても相手が喜んでくれない。ほめ方が間違っているのでしょうか」 西村さんはそんな質問を受けることが多いと言います。しかし、相手の喜ぶ顔を期待してほめるのは、相手を喜ばせようとコントロールすることにほかなりません。 西村「本当に心からこの人のここがすごいと思っているなら、相手が喜ぼうが、そっけない反応だろうが関係ありません。逆にほめている自分の心が豊かになった気分がして、『ほめさせてくれてありがとう』という気持ちになったりするものです」 このように「Z世代をほめる」には、自分の常識を押し付けず、相手の当たり前から学ぶ謙虚な姿勢、違いを面白がる心のゆとりが必要です。 そしてZ世代をほめることは、相手の成長の助けになるだけでなく、自分の人間力も高めてくれます。その気づきがZ世代とのコミュニケーションをスムーズにしてくれるでしょう。 取材・文・構成:久遠秋生 バナーイラスト:藤田翔 図版制作:WATARIGRAPHIC デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)