打者で明暗が分かれた交流戦。阪神の不調、巨人の巻き返しをお股ニキが解説!
「9連打は『メークドラマ』と呼ばれる大逆転優勝を果たした1996年の長嶋巨人以来です。 今季の巨人は、投壊状態だった昨季から一転、甲子園でノーヒットノーランを達成した戸郷翔征、完全復活を遂げた菅野智之、山﨑伊織を中心に先発陣が整備され、大勢に代わって抑えを務めるアルベルト・バルドナードもいい。守備も鉄壁なだけに、打線が打ち始めると順位も上がります」 巨人打線が爆発し始めた要因はふたつある。ひとつは、5月28日の交流戦開幕とともに1軍登録され、ヒットを量産するエリエ・ヘルナンデスの存在だ。新外国人の球団新記録となるデビューから8試合連続安打、球団最多タイの3試合連続猛打賞を記録する活躍で打線を牽引(けんいん)している。 このヘルナンデスについて、お股ニキ氏は、「MLB本塁打王の経験もあるホルヘ・ソレア(ジャイアンツ)に似ている」として、さらにその特徴を深掘りしてくれた。 「少し崩されても芯でとらえる能力があり、日本の横に広いストライクゾーン、スライダー系の変化球にも対応できる。 外へ逃げるボールに手をうまく伸ばしてレフト前へ運んだ来日初ヒットを見て、『日本向きだな』と思いました。アメリカ時代の指標は決して良かったわけではないので、日本への適応力を見抜いた海外スカウト担当者がいい仕事をしたといえます」 さらにお股ニキ氏は、「ヘルナンデスを2番に起用しているのがいい」と話を続ける。 「阿部慎之助監督は2番に打てる打者を起用したいようです。開幕直後にはオープン戦で活躍した佐々木俊輔を置き、その後もオコエ瑠偉を試した末、上位互換としてヘルナンデスが2番に定着。1番の丸佳浩は今季、長打が減った代わりにリーグ1位を争う出塁率を記録しているだけに、相乗効果を発揮しています」 そんなヘルナンデス加入以外でお股ニキ氏が挙げるもうひとつの好調要因は、打線全体の意識改革だ。そのきっかけとなった試合があるという。 「『王貞治デー』と銘打ち、王貞治さんと原辰徳さんの元監督が解説を務めた、ソフトバンクとの交流戦初戦です。この試合の6回、1点を追う場面で無死一、三塁のチャンスをつかみながら、バッターのオコエにバントのサイン。原さんも『強気でいってほしい』と苦言を呈していました」 このシーンは、SNSで「阿部采配」「オコエのバント」がトレンド入りするほどファンの間でも物議を醸した。 「この場面に限らず、今年の巨人は『どうせアウトになるなら』という高校野球的なバントが多かった。また、首脳陣が併殺を嫌い、選手が消極的になっていることに対して、『萎縮してバットが出ていない』と王さんも原さんも指摘しました。その言葉が阿部監督の耳にも入ったのか、吹っ切れたのでしょうね」 上述の「1イニング11得点」の試合は、この「オコエのバント」事件からちょうど1週間後の出来事だった。 「三振しても、併殺になってもしょうがないから思い切って振っていこう、という姿勢がチーム全体として出てきた。阿部監督もシーズンを戦ってまだ3分の1。残り3分の2でどんな采配を見せるのか、見守っていきたいです」 文/オグマナオト 写真/時事通信社