投資の神様バフェットはなぜ「株式」ではなく「債券」を選んだのか…金利ある世界でたどり着いた新たな大正解
「債券」の価値が上がる
――新NISA も始まったし、将来に備えてなるべく株式などで積極的に投資をしようと思っていたのですが、それは間違いなんですか? 投資自体がダメなわけではないですよ。重要なのは、リスク管理の度合いです。「現金では持たず、なるべく株式などリスク資産で運用する」というのは、これまでの超低金利時代の発想です。 ――じゃあ、これから日本は金利上昇局面になってくると……。 今度は、資産運用におけるリスクの取り方も調整しないといけません。例えば資産ポートフォリオに、これまでほぼ無視していた債券を組み込むなどです。 ――債券ですか? 正直、債券って大きくは値上がりしないし、なんか地味な投資先っていう印象があって……。 それも若い人がよく言うんですよね。ただ、あえて厳しい言葉を使うと、「資産運用がヘタな人ほど債券を軽視する傾向にある」んですよ。 ――ギクッ……! ちなみに投資の神様と言われている米国のウォーレン・バフェット氏が直近1年で最も買っている資産は何だと思いますか?米国債です。米国株が上昇してバフェット氏のお眼鏡にかなう投資先(株式)がないうえ、少し前まで米国債の利回りは5.0%もありました。であれば、無理して株式に投資する必要はなく、「投資チャンスが訪れるまで待とう」というわけです。 ――債券を使って、資産の持ち方を調整しているんですね。 これまでバフェット氏のポートフォリオの最大の保有銘柄だったアップル株を売却した理由は税金対策と言われてます。とはいえ、今の株式市場で積極的に投資すべき銘柄がないという意思だと私には思えます。 一方、急激な利上げで高金利になったアメリカでは「株よりも債券のほうに旨みがある」、言い換えれば「リスクを取らなくても債券でお金は増やせる」とバフェット氏が判断した証拠でしょう。
無理に株式を買う必要はない
――債券投資、考えてもいませんでした……。むしろGAFAM などアメリカのハイテク株のほうへの投資を考えていました。 直近の米国債(10年)の利回りはやや低下して4.5%前後ですが、一時期は5.0%を超える時期もありました。それを買えば元本が保証され、ほっておいても5.0%のリターンを得られます。リスクを抑えつつ運用できるので、金利上昇局面では有効な投資手法になります。繰り返しますが、バフェット氏も米国債で5.0%の利益が得られるなら、無理して株式を買う必要はないと考えたわけです。 ――投資の神様がそう判断しているなら、僕ら一般投資家も同じ方向を向いたほうがいいのかな……。 ほかにも、最近では日本の銀行や証券会社も債券に再び注目して、積極的に私たちに売り出そうと考えているんですよ。 ――そうなんですか? 例えば、みずほ証券では金利上昇を受けて国債のトレーダーに債券市場に精通した「ベテラン社員」を他部署から呼び戻しているようです。さらに、投資家向けに債券商品を提案する人材育成にも力を入れているとか。 なぜなら、これまでの金融機関では、株式や為替に比べて債券は超低金利が長期化してほとんど開店休業状態だったからです。〝地味な部署〞というより、人員削減の対象部署といっても過言ではなかった。そのため、債券に詳しい人材がいつの間にか少なくなってしまったんですね。 ――低金利が続いた影響がそんなところにも……。 そこに「金利のある世界」が戻ってきたので、慌てて人材確保に動いているわけです。債券市場の人材は、ヘッジファンドなども参入して激しい取り合いが行われていると見聞きします。地方銀行でも債券運用の人材集めに苦労したり、外資系金融などの債券関連部署に人を派遣して勉強(トレーニング)させたり、いろいろと大変だとか。 ――一般人だけでなく、「金利のある世界」が戻ってきて、金融業界も対応に苦慮しているんですね。
深野康彦
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