[富士]ともてぎにキャンプ場できたけど…どういう理由で作られたの?
■レース場でしか味わえない癖になるグランピング施設
「RECAMP富士スピードウェイ」になると事情はガラっと変わる。何しろ施設が建っている場所からして100Rのイン側である。 レース開催中なら疾走するマシンや車両同士の接近バトルを、客室のコテージやトレーラーヴィラの室内やベランダから居ながらにして観戦でき、レース中にマシンが発する実際の音を全身で体感できるところがスゴい。 完全なプライベート空間が確保されているため、周りを気にせず景色とレースを堪能できる点も良い。同じキャンプ場内には持参のテントを張れる個別エリアもあり、そこから100Rやヘアピンコーナーを見渡せる観戦ポイントはすぐの距離だ。 夜になると、マシンの咆吼に包まれた昼間の喧噪がウソのような静寂の帳が下りる。この激しい落差に驚き、虫の音をバックに流れ星を数えた数時間後には、小鳥の鳴き声とともに霊峰・富士の姿で新しい一日が始まる。 ユーノディエールの朝焼けも美しいが、早朝の凜とした空気のなか、最終コーナーのむこうに眺める朝日に輝く富士山はただただ神々しい。これはもう「RECAMP富士スピードウェイ」でしかできない体験で、レースファンならずとも一度は目にしたい光景だろう。
■"非日常"を"日常"へ…まずは敷居の高さの払拭から!!
モータースポーツに関わる職業以外の人にとってサーキットは非日常の空間だが、ファンとして何度もレース観戦に訪れていれば、やはりそこは日常の一コマになる。つまり日常と非日常を分けるのは回数ということだ。 とはいえ、富士で第一回F1日本グランプリが開催されてからほぼ半世紀、日本では相変わらずモータースポーツはメジャーとは言い難く、圧倒的大多数の人々はサーキットに出かけて生でレースを観戦する経験を持ったことがない。 何しろ大抵のサーキットは人里離れた山の中。モータースポーツに興味が湧いたとしても、子供同士や女性だけでサーキットに訪れることはいろんな面で敷居が高い。 だがプラスアルファのもうひと押しがあれば、高い敷居を超えてでも行ってみようという気持ちも強まる。 これまた子供や女性にとってちょっと敷居の高い野外での生活と、サーキットの抱き合わせは「一粒で二度美味しい」効果を産み、これまでモータースポーツを観る機会のなかった人々が、ファミリーや友だち同士(もちろんカップルでもOK)が未体験ゾーンに足を踏み入れるきっかけになるのではなかろうか。 ル・マンの一般駐車場でテントを広げ、簡単な料理やワイン、ビールで乾杯し、寝袋で熟睡する人々の手慣れた様子を見ていると、もう何回、何十回と同じことを当たり前にしてきたことが容易に想像できる。 彼らにとってル・マンを始めとするモータースポーツイベントやキャンプは、「非日常」というよりも「スパン長めの日常」といったほうが近い。 多くの日本人にとってモータースポーツが「スパン長めの日常」になる日はそう急には来ないだろう。それでも二つのサーキットにある野外宿泊施設を通じてモータースポーツへの興味が湧き、一度レースを観てみようかと思う人が少しでも増えればもっけの幸い。 人々の生活の延長線上にあってこそ、その事象は『文化』となるのである。