卒業アルバムの文化守りたい…佐世保の老舗写真館、県外の写真館に事業承継 ニーズの掘り起こしも
長崎県佐世保市の老舗写真館「フォトスクエア宇土」が事業承継により、卒業アルバム製作の再拡大に向けて事業を展開している。昨年2月に親会社となり事業を引き継いだのは奈良県の写真館「フォトスタジオエル」。同社の吉岡俊二社長(68)は「少子化でアルバムの需要が少なくなる中、街の写真館の文化を守りながら、地域に貢献したい」と思いを語る。 フォトスクエア宇土は1949年に創業。地域に根差した各種業務に取り組んできたが、人手不足などから卒業アルバム事業を縮小。後継者問題にも直面し、県事業承継・引継ぎ支援センターに登録していた。 吉岡社長は卒業アルバム事業が可能で、一定数の社員がいることからマッチングを図り、運営に乗り出した。フォトスクエア宇土では、自身が会長、息子の孝二さん(38)=フォトスタジオエル専務取締役=が社長を務めている。 フォトスタジオエルは写真業務全般を手がけ、卒業アルバムの取引先は幼稚園から高校まで奈良県を中心に200以上に及ぶ。撮影から各種補正、デザイン、印刷まで一貫して自社で対応。各校の教員らが撮影した写真も活用するなど、作業の効率化や低コスト化を実現している。小規模校の注文にも応じ、新たなニーズを掘り起こしている。 また、吉岡社長は全国約80社の業界関係者で組織する「メイキングプロモーション」を立ち上げ、卒業アルバムを次世代へ残す活動も展開している。 フォトスクエア宇土には湊町、卸本町店の2店舗があり、15人ほどの従業員の雇用を継続。ブライダル関連、記念撮影など従来の業務を続けている。卒業アルバムに関しては、県北地域で20校ほどを新規開拓し、さらにエリアを拡大する方針だ。 入社27年目の藤澤かおり主任(51)は「写真館は人生の節目に携わる仕事。歴史と信頼を礎に、しっかりとした基盤を築いてほしい」と話している。 吉岡さん親子は「写真は未来の宝物。一生の思い出になる。アルバムを作りたいが、少人数のため金銭面で諦めている学校もある。写真館の担い手不足にも貢献し、雇用も確保したい。佐世保を拠点に事業を広げていきたい」と業界の発展を願っている。