キャッシュレス生活で子どもは算数ができなくなる?ほんもののお金を使ったお店屋さんごっこで積む実体験
「1個」と「5円」の違いがわからないワケ
お菓子1個5円として、子どもが1個買うとします。「1個」が「5円」。まずこれが、小さな子どもには最初よくわかりません。「1」が「5」と同じってどういうことだろう? と不思議に感じるのです。 そこで一番はじめは、お菓子を1個置いて、その下に1円玉を5個並べます。2個買うときは、その下にまた1円玉を5個並べます。 こうやっていくと、「1」はお菓子の個数で、「5」は金額だとわかり、2つの数字の区別がついていきます。 私たち大人は「1個が5円」ということがわからないという地点に戻ることはできません。だから、しつこいようですが、子どもがわかっているように見えても、手をかけ時間をかける必要があるのです。 小学校に上がるまでに、「10円を出して、8円の物を買ったら、2円のおつりが返ってくる」というぐらいまで理解できるようになれば万々歳です。 最初は子どもがわかっていない様子でも、「これ8円だから、10円ちょうだい。2円おつりね」と、形からのスタートでいいでしょう。しかし、「10円を出して、8円って言われたら、2円返ってきた」という経験を繰り返すうち、「10円と8円と2円」の関係がセットで把握できるようになります。つまり、10の補数の勉強をしていることになります。 さらに、「10から8を引いて2」というのは引き算の勉強です。それと同時に、「8と2を足したら10」という足し算の勉強もしています。
こうした実体験があると、1年生になって足し算を習ったときに遊びの経験を糧にして学習を積み重ねていけます。就学してからも家庭で繰り返し、時間をかけてほしい数の勉強の基本です。1年生で100円玉まで使えるようになったら、学校ではかなり算数ができる子になっているはずです。
家にあるものをご家庭なりに工夫して
この遊びのいいところは、実益がありながらとても安全な点です。お金のやり取りで間違っても子どもが怒られることはありませんし、誰にも迷惑がかかりません。 そして、実際のお金を使うことで、物とお金の交換で世の中が動いていることや、お金が足りないと欲しくても買えないものがあること、逆にお金があっても物がなければ買えないことなどが実感でき社会勉強にもなります。 実物を使うからこそ数の感覚が磨かれるのですが、硬貨を用いることに抵抗がある場合は、おはじきで代用できます。青は1円、赤は5円、白は10円といったルールを決めればいいでしょう。お菓子を鉛筆や消しゴムなどの実用品に替える手もあります。 ただ、子どものテンションが上がる物を使うほうが効果が発揮されるのは間違いありません。「これで何が買えるかな?」「いくらいるのかな?」と、子どもが自分事として数字に向き合う機会を増やせるからです。実物遊びの意味はそこにあります。 ご家庭の方針に合わせて、工夫していっていただければと思います。
西村則康,辻義夫