実は「拒否権」も持っている地方の首長 住民が直接選挙で選ぶ首長の権限
第24回参院選、東京都知事選と続き、ことしは選挙の夏となりました。参院選では、改憲勢力が憲法改正に必要数に届いたこと、都知事選では与野党の支援を受けなかった小池新知事が誕生し、都議会とどうなるか、など、あらためて議会の動きが注目されています。 「内閣と国会」、「首長と地方議会」は、どのような関係の違いがあるのでしょう。
内閣の過半数は国会議員
「内閣」と「国会」の関係をみていきます。国会は内閣総理大臣を指名します(憲法67条)。その際、衆議院と参議院で指名が異なった場合には、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、または衆議院の議決後、10日以内に参議院が指名議決をしないとき、衆議院の議決に決まります。また、衆議院は、内閣不信任決議を決議することができます(同69条)。出席議員の過半数で可決となります。 内閣は、国会が指名した内閣総理大臣と国務大臣で組織します(同66条)。内閣総理大臣が国務大臣を任命しますが、過半数は国会議員の中から選ばなければなりません(同68条)。国会の召集は、内閣が決定します。内閣は行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負うことが定められています(同66条)。衆議院が内閣不信任案を可決した場合は、10日以内に衆議院の解散をしない限り、総辞職しなければなりません(同69条)。
首長にさまざまな権限 地方議会も不信任決議が可能
「首長」と「地方議会」の関係をみます。地方議会も首長に対する不信任を決議できます(地方自治法178条1項)。ただし、この場合、総議員の3分の2以上が出席し、その4分の3以上が同意することが必要です。首長は不信任決議に対し、解散ができるため、解散後の初めての議会で、再度不信任決議を行うことを可能にしています。その際は、総議員の3分の2以上の出席が必要ですが、過半数の同意で成立することになっています。再不信任決議が可決したときは、首長は議会を解散することができず、失職します。 首長は不信任決議に対する解散権以外に、議会の議決に対する再議権(拒否権)を持っています(同176、177条)。議決に対して意義があるとき、あるいは議会の議決や選挙が権限を超えている、法令違反などがあると認めたときに、再議や再選挙を行わせることができます。ほかにも、議会の議決または決定を経ないで処分する専決処分の権限があります(同179、180条)。議会が成立しないとき、議会を開くことができないとき、緊急を要し議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであるときなどに、専決処分が認められています。 議員内閣制をとっている「内閣と国会」と、主権者である住民から直接選挙で選ばれた「首長と地方議会」は、権限の大きさと相互けん制の手段に違いが現れています。