【SAVとして鍛え抜かれた20余年】X5のステアリングから伝わるBMWの美学
PEHVの「50e」を選ぶメリット
試乗時は、12.4kWhのリチウムイオン電池が満充電の状態であり、メーター上には126kmの走行が可能と表示されていた。このため、初日の移動は、ほぼ電気で賄うことが出来た。 静粛性の高さもあり、高速道路走行を含め、車内は静か。モーターによる加減速も滑らかなもの。ただBMWの魅力的な直6のサウンドや回転フィールが味わえないことに寂しさを覚えたのも正直なところだ。 モーター走行が可能なバッテリー残量を割ると、自動的にハイブリッド走行にシフト。そうすれば、パワフルなエンジンが目覚める。そのサウンドがBMWを操っているという満足感を与えてくれる。 そのため、ドライバーはアクセル操作がラフとならないように注意が必要だ。もっとも車両重量が2.5tもあるため、上り坂などではアクセルを強めに踏みたくなるシーンが生じるが、直6にモーターアシストが加わるので、モーター走行と比べて加速が少々荒々しくなるのはご愛敬だ。 もちろん、それもICE仕様ならば気にならない程度なものであるし、丁寧な運転動作を心がければ、滑らかな直6エンジンを活かした高級車らしい振る舞いを見せてくれる。ただエンジンが生む躍動感にBMWらしさを覚え、嬉しくなってしまうのも本音なのだ。 乗り味については、エアサスペンションの採用により、前後席とも快適性は極めて高く、不快な衝撃を感じることもなかった。 X7の登場までBMWフラッグシップSUVの座にあったX5だけに、7人乗り仕様も用意できるほどの大型ボディを備えるが、オーナーカーであろうとしてする姿勢が強い。個人的には、後席でゆったり過ごすよりも運転する楽しさが勝ったのが、X5との過ごした時間の感想だ。そこにSAVを名乗り、X5を鍛えてきたBMWの美学があるのだろう。 今は、仕様の関係か、PHEVの「50e」方が、ディーゼルの「40d」よりも30万円安い。自宅に充電環境が用意できるならば、特に趣味などで深夜早朝に自宅を出る機会が多い人には、EVモードのある「50e」を選ぶメリットは大きいと思う。 そして、現行型でガソリン6気筒エンジンを積むのは、この「50e」だけとなっているのも、BMWファンには注目して欲しいところだ。敢えて弱点を挙げるとするならば、ラゲッジスペースが他のX5よりも小さいことだが、それでも標準で500Lを確保する。また7人乗りが欲しいならば、ガソリン仕様には設定がないため、クリーンディーゼルを選ぶことになる。 今やX5も全てが1千万円越えとなり、伝統の直6エンジンを積み、プラグインハイブリッドである「50e」は、お買い得といえそうだ。
BMW X5 xDrive50e M Sport
全長×全幅×全高:4935×2005×1770mm 駆動方式:4WD 車両重量:2500kg エンジン:直列6気筒DOHC 使用燃料:ガソリン 総排気量:2997cc 最高出力:230kW/5500rpm(EEC) 最大トルク:450Nm/1750-4700rpm(EEC) 電気モーター:GC1P28M0 最高出力:145kW/7000rpm 最大トルク:280Nm/100-5500rpm トランスミッション:8速AT 車両本体価格:1260万円
大音安弘(執筆) 小川和美(撮影)