テストの成績が良いのは朝型か夜型か? 「教員が見る解像度」が上がるラーニングアナリティクス
データによって得られたエビデンスを基に教員を支援し、指導と学習を改善する取り組みが加速している。文部科学省は2024年4月22日、21回目となる「教育データの利活用に関する有識者会議」(以下、有識者会議)を開催し、第3期の議論がスタートした。5月8日~10日に開催された「第15回 EDIX(教育総合展)東京」では、教育データ利活用やラーニングアナリティクス(学習分析)の実践事例が発表された。 【図版】発表資料を見る 有識者会議を担当する文部科学省 教育DX推進室で室長を務める藤原志保氏は、EDIXの特別講演に登壇。教育ダッシュボードを導入した自治体の例を挙げ、「学校の状況がデータで表されることで、関係者の現状認識を一意にそろえることができる」と、そのメリットを説明した。こうした利活用を先進地域だけでなく全国的な動きにしていく必要があるとした上で、「実践を全国に共有すれば、各自治体でゼロからデータ分析を試行する必要がなくなる。関心を持った自治体は、ぜひトライしてほしい」と訴えた。
テストの成績が良いのは朝型か夜型か
教育ダッシュボードが主にデータの集約と可視化を目的とするのに対し、ラーニングアナリティクスはデータを分析して教員と学習者に有益な情報をフィードバックする。EDIXの特別講演「1人1台端末時代のデータ活用型学習」に登壇した京都大学 学術情報メディアセンター 助教の堀越泉氏は、同大の緒方研究室が取り組んできたラーニングアナリティクスの研究成果について、最新の事例などを報告した。 緒方研究室では、デジタル教材配信システムの「BookRoll」や学習分析ツールの「ログパレ」をはじめとして、さまざまな手法でラーニングアナリティクスを研究している。今回報告された事例の中で特に興味深かったものの一つが「リアルワールドデータに基づく学習習慣研究」だ。中学生を対象に、学習習慣とテストの成績にどんな関係があるかを調べた。例えば、学習する時間帯によって朝型と夜型があったり、コツコツ積み重ねるタイプとまとめて学習するタイプがあったりする。 「朝、頭がすっきりしているときに勉強するのが効果的」といったアドバイスを聞くことがある。ところが、データを分析すると、朝型と夜型の間にテスト結果の差はなかった。ただし、学習する習慣がない生徒の成績との差は明らかで、「学習する時間帯は関係ないが、学習する習慣は必要」(堀越氏)というわけだ。また、コツコツ学習タイプとまとめて学習タイプというスタイルでは、前者の方が成績は良かったものの、大きな差がないというのも意外な結果だ。堀越氏は、「日々の学び方のデータがあることで、学習習慣と成績の関係だけでなく、それ以外の要因があるのかを調べたり、クラス間の比較をしたりするときなどに役立つ」と説く。