米自動車ディーラーで混乱続く、1.2兆ドル市場揺るがすサイバー攻撃
(ブルームバーグ): 米アリゾナ州フェニックスのディーラーは契約書を手書きし、顧客の信用度を当て推量するしかない状況だ。アラバマ州の「ジープ」所有者は、交換部品の入荷時期について何度も電話で問い合わせている。ニュージャージー州のある家族は、新車「アウディ」がいつ納車されるのか首を長くして連絡を待っている。
全米およそ1万5000店のディーラーにソフトウエアを提供しているCDKグローバルがサイバー攻撃を受けたことで、米国とカナダの自動車ディーラーと顧客の間では、このような混乱が続いている。サイバー攻撃は米国の祝日に当たる6月19日に始まり、通常なら活況となるはずの機会が台無しとなった。CDKは20日、2度目の攻撃を受け、さらに数日間システムが停止する恐れがあると警告した。
全米自動車ディーラー再び混乱、ソフト会社に2度目サイバー攻撃 (1)
今回の攻撃により、昨年米国だけで1兆2000億ドル(約190兆円)超の売上高をたたき出した業界に壊滅的な影響が及んでいる。CDKの主力製品である「ディーラー管理システム(DMS)」と呼ばれるソフトウエアツールは、ディーラーの日常業務をほぼすべての面で支えている。
数十年にわたる業界再編の結果、ディーラーにとってはDMSプロバイダーの選択肢はほんの一握りにまで減った。融資・保険の手配、車両・部品の在庫管理、販売・修理の完了などの日常業務でDMSは欠かせず、多数のディーラーが数少ないDMSの提供元に大きく依存する構図となっている。
CDKの親会社ブルックフィールド・ビジネス・パートナーズの株価は20日に5.7%急落し、昨年10月以来の大幅安で取引を終えた。同業のオートネーション株価も3.6%下落し、ここ2カ月で最大の下げ幅。グループ・ワン・オートモーティブ、ソニック・オートモーティブ、リチア・モーターズの株価も軒並み安となった。
フェニックスの日産ディーラーでセールスマネジャーを務めるアレックス・パドロン氏は、20日の営業は「ほぼ停止状態」だったと話す。CDKのソフトウエアを使い始めた2014年以降、この店で車を購入したすべての顧客データがシステムに保存されているといい、その数は「おそらく5万人を超える」と述べた。