木曜の夜、フードコートに集う外国人たち 36歳元消防職員主催の交流の場、300回に 青森・おいらせ町
毎週木曜日の夜、青森県おいらせ町のイオンモール下田のフードコートに、上十三地域各地から外国人が集まってくる。にぎやかな輪の中心にいるのは、六戸町の川村真吾さん(36)。県内在住の外国語指導助手(ALT)の交流の場をつくろうと、一人で、ボランティアで活動している。川村さんがつくる自由な場は外国人のみならず、地域に住む日本人や子どもたちも引きつけている。 川村さんは六戸町出身。都内の大学を卒業後、十和田消防本部に就職した。消防職員だった23歳の時、十和田市の祭りを通じ地域で働くALTたちと出会った。学生時代は相撲に打ち込んだ。あまり勉強したことのなかった英語を学ぶのに興味が湧き、ALTの家に遊びに行ったり、ファミレスなどで英会話を練習したりと定期的に集まるようになった。 「日本は好きだけど青森は好きになれなかった」。2013年ごろ、半年ほど共に過ごしたALTの友人が、米国に帰国する際に口にした一言が今に通じる活動の原点となった。 この友人は川村さんたちとは交流があったが、観光もせず青森県のことはほとんど何も知らなかった。川村さんは「ショックだった。せっかく来たなら、青森に来て良かったと言わせたいと思った」と語る。 ALTは、赴任する地域によっては英語が話せる同僚がおらず、孤独を感じてしまう人も少なくないという。この出来事をきっかけに、川村さんはより深く、ALTたちと付き合うようになっていく。 夏祭り時期にALTたちと津軽地方に足を運んだり、市民マラソン大会などローカル色の強いイベントに参加したり。自身の英語力向上のための定期的な集まりは、ALTにとっても、母国語で肩肘張らず集まれる居場所になっていった。 人が人を呼び、いつしか毎回数十人が集まる大所帯に。18年、イオン下田1階のカフェからより広い2階のフードコートに場所を移して始めた集まりは、今年6月中に300回を数える見通しだ。 5月下旬。外国人や地域の子どもたち計約30人が参加し、談笑したり夕食を食べたり、それぞれが好きなように共に時間を過ごしていた。 約3年前に南アフリカから来日し、現在は七戸町の中学校で働くジョシュ・ベネットさん(29)は「多くのALTはホームシックにかかる。ここは友だちをつくる最高の場所」と話す。 川村さんの活動は交流サイト(SNS)などで評判を呼んだ。自治体関係者からの招きもあり、青森市でもALTらの集まりを企画するように。弘前市にも週1回通い、同様の集まりを主催する。 活動の範囲が広く、比重が大きくなってきたこともあり、消防は昨年3月いっぱいで退職。現在は六戸町で会社を興し、時間を捻出して活動に当たる。川村さんは「自分が楽しいから続けている。(こうした活動に特化した)NPO法人設立など、新しいことにも挑戦していきたい」と話す。