メンタル不調にも…”マインドフルネス瞑想”の有用性、一方で「短期間で効果が出る」という指導者には注意が必要【医師が解説】
■年間1300本以上の論文で科学的効果も立証、人間関係の向上から老化、肥満の原因まで対処
では、実際、どのような効果が科学的に立証されているのでしょう。 「脳には一般的にデフォルトモードネットワークと言われているネットワークがあって、数カ所の部分が相互に情報のやり取りを繰り返し、いつでもパッと動けるようなアイドリング状態を作っています。常にぐるぐる思考が回っている状態なので、かなりの疲労を生んでいるのですが、瞑想をすると、前頭葉部分が活性化し、デフォルトモードネットワークの働きが下がって、脳が過剰なエネルギーを使わなくて済むようになり、疲労が取れます。前頭葉には”人間らしさ”を司る機能も集まっていますので、活性化させることによって、他人に対して共感性や思いやりなどが持てるようになり、人間関係の向上にもつながります。 さらに、瞑想によって新しい記憶を司る脳の海馬の容量が増加することも証明されています。また、瞑想を長時間続けた人は、ネガティブな感情を拡散させる働きを持つ扁桃体が小さく、ネガティブな感情から早く回復でき、キレる状態にならず冷静に対処する力が備わることも明らかになっています。遺伝子においても、心筋梗や脳梗塞、肥満、老化などの原因になるRIPK2という遺伝子の活動が長時間瞑想することで下がるという結果もあります」 中でも内科医の山下氏が強調するのが自律神経への働きです。 「緊張していると交感神経が働き、その状態が長く続くと、不眠や高血圧、冷え性、腰痛、胃潰瘍の原因になります。現代人は交感神経を働き過ぎにさせないことで病気をコントロールすることが大事なのですが、瞑想を行うと、交感神経とリラックスしているときに働く副交感神経とがシーソーのように良いバランスを保てます」 今や効果を証明する論文が年間1300本以上も発表されているほど、科学者から注目されている瞑想ですが、それでも日本においてはまだまだ研修に取り入れることを敬遠する企業は多く、「マインドフルネスの正しい理解が知れ渡っていないと実感している」と山下氏は語ります。