ウクライナ軍、越境攻撃に精鋭の空挺旅団も投入 「本格侵攻」の様相強まる
虚を衝かれたロシア軍は対応をめぐる意思決定も遅れているもよう
クルスク州で起こっていることは襲撃ではなく侵攻であることが、時間を追うごとに明らかになっている。もっとも、ウクライナ側がこの侵攻に多大なリソースを投じているからといって、成功が保証されているわけではない。侵攻エリアやその周辺に展開しているウクライナ部隊は総勢1万人規模にのぼるのかもしれない。一方、近くの国境地帯で戦うロシア軍の北方軍集団(「セーベル(北)」作戦戦略軍集団)は総勢4万8000人規模だ。 だが、北方軍集団は現在、ロシア軍の北東部攻勢で主要な戦場になっているウクライナの国境の小都市ボウチャンシクで行き詰まっている。ボウチャンシクは、ウクライナ軍の侵攻で中心地となっている町スジャから南東へ150kmほどに位置する。 ウクライナ軍部隊は、北方軍集団の兵力が最も手薄な場所を狙って国境を越えたようだ。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は8日の作戦状況評価で、ウクライナ軍司令部は「奇襲作戦に成功した」と書いている。 北方軍集団がスジャ方面に兵力を振り向けられるか、そしてそれをどれくらい早く行えるかが、この侵攻の結果を左右する要因になりそうだ。ロシア側の対応が早ければ、ウクライナ側の進撃を抑え込み、さらには押し返すこともできるかもしれない。だが、対応が遅ければ、クルスク州でさらに多く失地することになるかもしれない。 一方で、この作戦が裏目に出る可能性もまだかなりある。侵攻部隊は砲兵や防空システム、兵站の支援を受けられる範囲を越えて進軍すれば、クルスク州の奥深くで孤立し、敵の火力に圧倒されかねない。ウクライナ軍は容易には代替できない数千人の人員を危険にさらしている。 ただ、ウクライナ軍部隊はたんに急速に進撃しているだけでなく、第80空中強襲旅団の本格的な火力を携えてもいる。 ウクライナ軍の指揮官たちは、攻撃のペースと規模でロシア軍の指揮官たちを慌てふためかせた。これは称賛に値する。CDSは北方軍集団司令部の意思決定には「顕著な遅れ」がみられるとし、それはウクライナ軍による今回の作戦の「おそらく本質と考えられるものを見誤った」ためだと断じている。
David Axe