今井美樹 免許取得はホンダの広告が契機 初マイカーと再会&今の愛車について語る
シトロエンを購入しようとしたけれど……
最初の愛車に出会う前に、今井さんは一度、クルマを買おうと心に決めたことがある。 「シトロエン『CX』に乗ろう!と、思いました。本当は父が乗りたかった『CX』。父に電話をしたら、『自分もGSに乗っていたけれど本当はCXが欲しかった』と。続けて『お父さんが乗れなかったCX、お前似合うぞ』と、言われて、その気になりました(笑)。マネージャーさんと埼玉か八王子の中古車屋さんへ見に行ったけれど、そこの個体は『う~ん色がな~……』と、出会えず……。別のディーラーの方が世田谷の自宅まで試乗車を持って来てくれました。でもハンドルが重いというかすぐ直進に戻ろうとするし、ブレーキがペダルというよりスイッチみたいな感触で、なかなか手強かったです。小回りが利かないのも困りもので、世田谷の狭い道で何度も切り返しをしました」 シトロエンCXのパワーステアリングに備わるセルフセンタリング機能は、操舵すると強い力で直進の位置に戻ろうとする。これが高速クルーズ時の直進安定性につながるという人もいれば、不自然でイヤだという人もいて、評価は分かれる。ブレーキペダルのストローク量が小さいことも独特で、いわゆる“カックン・ブレーキ”にならないように減速するのには、慣れを要した。 「決定的だったのは、ディーラーの方が、『エンジンが掛からないときには、タバコを1本吸うくらいの余裕が必要です』と、おっしゃったことで(笑)そのダンディーさ、私には無い、と、思って諦めました」
アメ車との運命の出会い
こうして、クルマとはあまり縁がない生活を送っていた今井さんであるけれど、90年、20歳代の後半に差し掛かったときに、運命的な出会いを果たす。 「マネージャーさんの運転で事務所のクルマに乗っていたら、突然黒いクルマが前に入ってきて、『なに、この格好いいクルマ?』と、尋ねたら、『ジープのチェロキーという四駆ですよ』と、教えてくれたんです。『へぇ、アメ車なんだぁ』と、思いながら、数日後にまたチェロキーの後ろを走る機会があって、やっぱりすごくいいなぁ、と、思ったんです。ちょうど家の近くにクライスラーのディーラーがあって見に行ったら、四駆なのに薄くてスクウエアな感じ、シンプルな四角い箱みたいなフォルムがすごく好きでした。グリルは思っていたよりいかつかったけど、後ろ姿に惚れました」 ただし、購入にあたってはひとつだけ問題があった。 「チェロキーの91年モデルが店頭に並んでいて、ボディの横にストライプが入っていたんです。スポーティかもしれないけれど、チェロキーの削ぎ落としたスタイリッシュさに一目惚れだったので、どうしてもストライプのない90年モデルに乗りたかった。それで、ホンダのお仕事でつながりがあった方に相談して、90年型のジープ・チェロキーを探してもらったんです」 ジープブランドを保有していたクライスラー(当時)は、90年にホンダと販売提携を結び、ホンダの販売店でジープを販売していたのだ。クライスラーとホンダの提携は、97年まで続いた。 「90年モデルのチェロキーを見つけていただいて、色はガンメタを選びました。バンパーが黒くて、サイドのラインがないとボディがシャープでカッコよかった」 初めて愛車を持つようになって生活は変わったかと尋ねると、今井さんは「変わりましたね」と、軽くうなずいた。 「夜の高速を走るときも、海のほうをドライブするときも、とにかく音楽がかかりまくっていました。クルマってプライベートな空間で、そこで絶え間なく好きな音楽を聴きながら、流れる景色と気分で、特別な時間になる。最高ですよね。ものすごく大事な音楽空間。あの頃聴きまくっていた音楽が、今の私の核になっているような気がします。最近よくあの頃の曲を聴くんですが、すぐに体中が反応します。細胞が喜んでいるのがわかります(笑)」