165球完投、決勝打の近江・山田 ライバルの無念背負い センバツ
第94回選抜高校野球大会は第2日の20日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で1回戦が行われ、新型コロナウイルスの感染者が多数出た京都国際の辞退により近畿地区補欠1位校から繰り上げ出場した近江(滋賀)が、長崎日大を延長十三回タイブレークの末、6―2で破った。右腕・山田陽翔(3年)が投打に大車輪の活躍を見せた。 【近江vs長崎日大 緊迫した熱戦を写真特集で】 思わぬ形でセンバツ切符を手にしてから中2日。近江の山田が165球で完投し、決勝打も放った。エース、そして4番として、準備期間の短さを感じさせない働きの陰には、冬場の鍛錬と強い思いがあった。 「背番号1」の存在感は、回を追うごとに増した。毎回走者を許して迎えた六回に甘い変化球を連打されて2点を失ったが、引きずらない。以降も失策や四死球絡みで何度も走者を背負ったが、九回に追いつくと「しっかり引っ張っていかないと。改めてそう感じてギアを上げた」。延長十回2死満塁のサヨナラのピンチは142キロの速球で空振り三振。終わってみれば七回以降は無安打に抑え、タイブレークに入った延長十三回に自らの左前適時打で試合を決めた。 4強入りした昨夏の甲子園は全5試合に先発したが、秋は右肘の故障で登板なし。冬場は、リリースポイントを前にするようフォームを改良。磨きのかかった角度のある直球がこの日はさえた。3月12日の練習試合で対外試合のマウンドに戻ったばかり。「後半は右足に疲れがあった」と話すが、それを感じさせないマウンドさばきだった。 17日に急きょ出場が決まったため宿舎が確保できず、午前6時半に滋賀を出て当日入りする異例の日程。試合後は「出場できるうれしさより辞退された高校のことを思うと、いたたまれない思いが一番強かった」と複雑な表情ものぞかせた。新型コロナウイルスの影響で戦わずして大会を去った京都国際のエース森下瑠大とは面識もあり、悔しさが手に取るように分かるのだろう。同じ近畿勢のライバルの無念も背負い、頂点を目指して腕を振り続ける。【野村和史】