『エクソシスト』『恐怖の報酬』のウィリアム・フリードキン監督×アル・パチーノ 全米を震撼させた問題作 映画『クルージング』がリバイバル上映
2023年8月7日、巨匠ウィリアム・フリードキンが87才で世を去ってから1年。フリードキンのフィルモグラフィの中で最も全米を震撼させた問題作ながら、近年では再評価の機運が高まっている、映画『クルージング』が公開される。 70年代、ニューヨークで実際に発生したゲイの男たちを狙った猟奇連続殺人事件を基にしたこのクライム・サスペンスは、結果的にハリウッド映画史上初めて男同士のSMセックスを正面から描いたことにより、同性愛差別を助長するとして製作発表時から公開後まで全米各地で猛烈な抗議活動を受けた。大変な話題作となったものの、批評と興行は振るわず、今世紀に入るまで長らく語る者も稀だった。 しかし、近年、『パルプ・フィクション』のクエンティン・タランティーノ、『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン、『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマら名監督たちが本作をフェイバリットに挙げ、各国のクィア映画祭では、HIVウイルスが世界に蔓延する前のゲイ・カルチャーを記録した貴重な作品として再上映、再評価される機会が増えている。 舞台は夜のニューヨーク。青と黒のトーンで統一された、あやしく退廃的な雰囲気が立ち込める映像世界。そんな中でひときわ物騒に輝くナイフと黒いサングラス。ゲイの男性ばかりが狙われる連続殺人事件を探るため、NY市警のバーンズはSMクラブでの潜入捜査を開始する。そこで彼が目撃するのは、レザージャケットや黒のタンクトップ、鋲打ちのベルトやデニム、レザーハットにそろって身をつつんだ大勢の男たち。彼らが互いを見定め、踊り狂うSMクラブでの様子は、汗や煙の匂いも伝わるほどの熱気と凄まじさに満ちている。 フリードキンは、警察やゲイ・コミュニティの人々と交流を重ねた。その結果、当時、ロウアー・イーストサイドに実在していた「マインシャフト」や「アンヴィル」という、ゲイのサディストとマゾヒスト以外は立入禁止のSMクラブ内での撮影が許可されたという。なお、SMクラブ内の男たちは実際の常連たちが演じている。そんなサディズムとマゾヒズムが渦巻く男だけの世界に潜入する主人公バーンズを演じるのは、当時すでに大スターだったアル・パチーノ。最初は当惑するバーンズだったが、やがてその世界に身も心も浸されていく。 映画『クルージング』は、2024年11月8日(金)より全国順次公開。
otocoto編集部