寿司シェフとしてフィンランド移住→倒産→漫画がコミックアワードに 週末北欧部chikaが見つけた仕事を“減らす”働き方
編集・デザインを手がけた漫画『Suomi-friikin päiväkirja』
──「自分の人生を自分で決める」というのは、幸せの基準を自分で決めるということなのでしょうか。 そうだと思います。フィンランドで暮らしはじめて、「自分自身が大事にしたいことを、意志を持って守る」ということが人生には不可欠だということを学んだように思います。 たとえばそれは、私の場合は、晴れた夏の日にソフトクリームを海の上の橋で食べることや、静かな湖畔でペールエールを飲むことのように、とても小さなことです。これは人によってさまざまで、大自然の中で過ごす時間だったり、家族と一緒に過ごす時間だったり、それぞれ違うと思います。他の人から見たら些細なことでも、自分にとっては大事なことを、大げさに大事にしながら守っていく。それが豊かで幸せな人生につながるのだと、日々感じています。 ──フィンランドでの暮らしにも慣れてきて、次の目標は? 移住前は、「何があっても3年間は頑張る」ということだけ決めて、フィンランドへやってきました。20代の頃に働いていた職場で「まずは3年」という働き方をしたことが自分の性に合っていたので、今回も「1年目はがむしゃらに頑張り、2年目で壁にぶつかり、3年目で軌道に乗せる」というプロセスを思い描いていたのですが、2年目の壁がまさかの「失業」という予想外の展開だったことで、移住前に考えていた目標や計画とはまったく違う人生を歩むことになりました。 でも、「倒産」「転職」という強制的なリセットで、「自分を自分にしていた要素」が見えてきたのは、逆にラッキーだったと思っています。 今は、フィンランドでも作家の仕事ができたらいいなと考えています。そのためにフィンランド語のレッスンをはじめ、自分で手作りのフィランド語の漫画を作りました。 本屋に売り込みに行き、自分でデザインから装丁、編集まで手がけた漫画『Suomi-friikin päiväkirja』(「フィンランドオタク日記」)を、本屋さんで取り扱っていただけることにもなったのですが、なんと、この漫画が今年のフィンランドコミックアワードのファイナリストにノミネートされたとご連絡をいただき、まさかの展開に驚いています。 寿司シェフを辞めた時は、同僚や仕事仲間がほしいと思っていましたが、漫画家や作家コミュニティに顔を出すようにしていたら、翻訳者の方をご紹介いただいたり、作家仲間ができたりと、新しいコミュニティも広がりました。 自分の意志を大事にしながら、このまま新しい景色に向かって進んでいきたい。それが次の目標です。
相澤洋美