東出昌大『Winny』で主演男優賞、遺族の言葉に「役者やって良かったと魂が震えた」
東出昌大が22日、都内で行われた『第33回日本映画批評家大賞』授賞式に出席した。『Winny』での演技が評価されて主演男優賞を受賞した。 【動画】東出昌大の授賞式の模様。髭ナシ姿で登壇。マイクスタンドの高さを自分で直す姿も 受賞のスピーチで東出は「映画の現場を初めて経験したのは22歳でした。それから14年経ってずっと演じるとか、お芝居は何だろうと考え続けて、今もその問いは消えません。僕の場合、役者の仕事で必要なことは地味な準備だと思っています。セリフを覚えることや資料を読むこと、体型を変えるとか人に見られない所での準備が現場で活きるんです。あとは役者をどうやったら続けていけるんだろうと日々考えています。でも答えはなくて、たくさん映画や演劇を観たり、先輩方のお話をメモしたり、本を読んだり。でもこれさえしていればいい芝居ができるという方程式はなくて。やっぱり準備以外に頼れるものは根拠のない自信しかない。でもそれが行き過ぎると過信になってしまう。人を演じる所から遠のいてしまう。根拠のない自信を持ちながら準備を怠らず映画の現場に戻って来たい」と思いを述べた。 選考委員は今回の受賞理由を、東出が演じ、この作品のモデルになったファイル共有ソフト「Winny」の開発者・金子勇さんに触れ「金子さんは亡くなっていますが、親族の方が東出さんの姿を観た時に生き写しのようだと涙したそうです。映画の最後にニコニコ動画の映像が出てきますが、あれしか生前の言葉や様子が残っていない。演じようと思っても素材がない。何度も繰り返しご覧になったと聞きすごい役作りだと思いました。臆せずに言うと、司法の在り方や誹謗中傷の在り方が描かれていますが、東出さんご自身が過去のスキャンダラスによって誹謗中傷を受けたことがある。その金子さんの姿と東出さんの姿が重なってしまう。それ自体は悪い事ではなくて、役者にとってはこの役に巡り合えるのは一生に一度しかない。その一期一会を僕らは映画のなかで目撃しているんだということにも感動した。それも選考理由になっています」と明かした。 それを受け東出は「根拠のない自信ともう一つの原動力として、全部自分のためにお仕事するのはそれほど頑張れなかったんです。誰かのため家族のため仕事関係者のために仕事をするんだと思っていたんですけど、お芝居って何だろうと考えた時に、今回は金子さん、天才プログラマーの周りにいらしたご遺族や弁護団の方々がこの映画の完成を喜んで下さって、金子さんの人生が報われたと思って、こんなに直接的に人のためになる仕事があるんだと、この時に役者やって良かったと魂が震えました。この作品に出会えて良かったです」としみじみ語った。